宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月9日、小惑星探査機「はやぶさ2」が生成に成功した人工クレーター周辺へのタッチダウンの可能性を検討することを目的に、タッチダウンの目印となるターゲットマーカーの投下を行う計画であることを明らかにした。

今回、タッチダウンの候補地点となっているのは、人工クレーターが作られたエリア「C01」および、前回のタッチダウンのバックアップ候補地であったエリア「S01」、そして人工クレーター生成後の観測で新たに候補地となったエリア「L14」の3か所。いずれも人工クレーターからのイジェクタ(飛散物)があると期待されているほか、いずれのエリアも直径6~12mほどの空き地があることが確認されており、ピンポイントタッチダウンによる運用(PPTD)となる。

  • タッチダウンの候補地点

    5月9日時点で検討されている第2回タッチダウンの候補地点 (C)JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研

これら3つのエリアから、実際にタッチダウンする目標地点を選択することとなるが、気になるのはそのスケジュール。今後、小惑星リュウグウが太陽に近づいていくため、小惑星表面の温度が上昇してしまうため、7月初旬までにすべての作業を終える必要があるためだ。

そのため、5月15日~17日(日本時間)にかけてS01エリアに対する低高度降下観測とターゲットマーカーの投下運用(PPTD-TM1)を実施(最低高度に到達する時刻は5月16日11時30分ころを予定。日本時間)。その後、5月末と6月初旬にも低高度降下観測運用を実施、それと併せて状況に応じてターゲットマーカーの投下を行う予定としている(1回目のターゲットマーカーの投下位置により、2個目以降のターゲットマーカーの投下の有無は判断される)。

  • PPTD-TM1運用の時間軸の流れ

    PPTD-TM1運用の時間軸の流れ (C)JAXA

こうした観測から得られた地形の状況とはやぶさ2の機体状態を併せて実施の可否について6月初旬までに精査。そこでタッチダウンが可能、という判断に至った場合、実際の実施は6月末~7月初旬に行う計画としている。

なお、実際のタッチダウン運用を行うか否かの判断については、以下の3点を精査する必要があるとしている。

  • 第2回タッチダウン実施の科学的・工学的価値
    • タッチダウン運用のリスクが十分小さく、第2回タッチダウン実施の価値が十分高いといえるか?
    • 人工クレーターのイジェクタを採取できる確度が高いといえるか?
  • タッチダウン運用の成立性
    • タッチダウンに必要な地形情報が得られ、十分安全なタッチダウンシーケンスが設計できるか?
    • ターゲットマーカーがタッチダウン目標点の近くに落とせたか?
  • 探査機の状態
    • 第1回タッチダウンの際、光学系が砂塵により曇ったことが判明しているが、その状態で支障なくタッチダウンできることが確認できるか?
  • PPTD-TM1運用の低高度シーケンス

    PPTD-TM1運用の低高度シーケンス。前回と異なる点は2つ。1つは低高度運用で用いられるLRFなどは計測を行うが、運用には用いずLiDARなどを活用すること。もう1つは、ターゲットマーカーを分離した後、ホームポジションに戻る際に、ターゲットマーカーの観測するために、高度を上昇させて三次元視により測定を行うという点となっている (C)JAXA