世界中とつながれることがバーチャルならではの魅力

海外での生活とアニメ好きの経験を22/7の活動に生かしている天城さん。自分の演じる藤間桜のことはどのように思っているのだろうか。

「桜ちゃんは、とにかくまっすぐで明るい子ですね。演じている私のインドアで暗い性格とは正反対(笑)! でも、だからこそ桜ちゃんを演じたいと思いました。桜ちゃんが大好きで、どのキャラクターよりも幸せになってほしいと願っています」

性格が違うからこそ演じたい。そう話す天城さんだが、自分と性格のギャップが大きいキャラクターを演じるのは、難しそうなイメージがある。

「たしかに、グループに入って間もない頃は、自分と正反対の存在である桜ちゃんみたいにコミュニケーションできるか不安でした。でも、実際に番組の企画などで、積極的にいろいろな人に話にいくと、“意外とみんな優しく接してくれる”ことに気づけたんです。桜ちゃんから勇気をもらえた感じですね」

バーチャルのキャラクターを演じることで、リアルの自分が成長する。両極端に位置する2人だからこそ、得られたものなのかもしれない。

「むしろ、もともと引っ込み思案な性格なので『天城サリー』としてだったら、動画やテレビ番組で饒舌に話ができないと思います。バーチャルのキャラクターだからこそ、普段言えないようなことも言えるんです」

2018年7月には22/7が出演するレギュラー番組『22/7 計算中』がTOKYO MXでスタートした。そこでも「自分が話している」という意識より「藤間桜」が話しているというイメージなのだという。

「学校では無口ですが、沈黙が嫌いなので仕事ではよくしゃべるんです。ただ、どちらが本当の自分とかではなくて、どちらも自分なんだなと思います。よくしゃべるという自分の側面は、22/7に入ってから発見することができました」

22/7に入って、そして藤間桜を演じたおかげで、大きな成長を実感している天城さん。デジタル声優アイドルとして、どのような存在を目指すのだろうか。

「私がよく言うのは『友達になりたいアイドル』です。それを目指して、今後も活動し続けていきたいと思います。手の届かない『遠い存在のアイドル』は、自分には合わないかなと思っていて」

アイドルはかつて、なかなか手の届かない存在だった。しかし、おニャン子クラブから徐々に親しみやすい存在になり、「会いに行けるアイドル」を標榜したAKB48から決定的に親しい存在になった。

現在は、会いに行かなくても「ネット配信」で、日本はおろか、世界の人々とリアルタイムでコミュニケーションができるほど、近しい距離になっている。そんな時代で彼女が「友達になりたいアイドル」を目指すのは自然なことかもしれない。そうした距離感の存在が、今後さらに増えていくのだろう。

「以前、桜ちゃんとしてバーチャルハイタッチ会をやったんですが、そんなバーチャルライブのような取り組みが広がれば、海外にいる人も日本に来ることなく桜ちゃんに会えますし、私たちの活動を世界中の人に知ってもらえます。そうやって世界から応援してもらえるようなグループになるといいな」

世界中どこにいても会えること。それはアメリカで育ち、多くの海外ファンがいる天城さんだからこそ、出てくる視点だろう。そんな彼女にグループとしての今後の目標について聞いてみた。

「22/7には、声優として活動したいと考えているメンバーもいるので、それぞれ目標とするところでも活動してほしいですね。そこで得たものを22/7に持って帰ってきてもらい、マルチなグループに成長できたらいいなと思います」

そう話す天城さん自身も、TVアニメ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』のベルトワーズ・ベツィー役や、アニメ映画『パンドラとアクビ』のアクビ役として、アニメの声優にも挑戦している。

彼女はそこで何を得て、何を22/7に持ち帰ってくるのだろう。デジタル声優アイドルという他に類を見ない活動をする天城さんと22/7が、どのように成長していくのか、そしてアイドル業界やVTuber業界にどのような影響を与えるのか、興味は尽きない。