海外育ちのアニメファンだからこそできた動画スタイル

また、英語のYouTube動画を配信しているのも、藤間桜の特徴の1つだ。実は天城さん、両親は日本人だが生まれも育ちもアメリカ。動画では「heyguys!」という挨拶からはじまり、日本のニュースを英語で紹介したり、漢字の難しさを体を張って伝えたりと、帰国子女らしいキャラクターを押し出している。

しかし、遠く離れた異国の地で育ちながら、なぜ日本でデジタル声優アイドルを目指そうと思ったのだろう。

「日本のアニメ、特に『銀魂』を大好きになったのがきっかけです。『銀魂』で主人公の銀さんを演じる声優の杉田智和さんに憧れて、『日本で声優をやろう!』って思い立ったんです」

声優を目指したきっかけは日本のアニメだった。しかし、それ以外にもアニメは自分に大きな変化を与えてくれたのだという。

「昔はアメリカに染まろうと思っていて、日本人の部分を少し隠そうとしていました。そうした心境を変えてくれたのも、アニメだったんです。アニメを好きになってから、アメリカで開催されている『アニメ・エキスポ』に行ったんですが、そこで出会う人々に『日本人なの? 日本って、いいよね!』と、言ってもらえて。それ以降、周囲に隠そうとしていた自分の日本人の部分が、誇らしく感じられるようになりました」

天城さんが育った地域は日本人が少なかったこともあり、小さい頃は「日本語を話せること」や「日本のお弁当」を隠したい気持ちがあったという。しかし、日本のアニメに触れたことで、その考えは大きく変わった。

「それと、実は学校にあまり登校していなかった時期があったんですが、それもアニメに触れているうちに変わっていきましたね。アニメファンって、アメリカではインドアでネガティブなイメージがあったんです。だから、学校には自分の居場所がないように感じていました。でも、日本人であることを受け入れると同時に『ありのままの自分でいいんだ』と思えるようになって。それから、学校にもしっかり通うようになりましたね」

日本のアニメがきっかけで、夢ができ、日本人としての自分に自信を持てるようになり、学校にも行くようになった。まさに人生が大きく変わった天城さん。しかも、その生い立ちが、VTuberとしての活動にも大きな影響を与えているという。

「英語ができるのは自分の大きな強みだと思うんですが、それだけではなく、海外でアニメファンをしていたことが大きかったと実感しています。例えば、アメリカで日本のアニメを見ているとき、ずっとキャラクターが英語で話していることに対して、ものすごく違和感がありました。アニメ特有の柔らかいニュアンスが、英語のセリフからは感じられないんです。それは私だけでなく、海外のアニメファンが普段から感じていることだと思います」

そのため、天城さんは自分が配信する英語の動画に、1つの工夫を取り入れた。

「私はあえて英語に日本語のニュアンスをおりまぜて配信をしてるんですよ。英語に日本語のニュアンスを混ぜる言葉を、向こうでは『ジャングリッシュ』(JapanとEnglishを合わせた造語)と呼ぶんですが、英語の最後に“です”を入れたり、途中で“これです”という日本語を入れたりしています」

日本のニュースをジャングリッシュで紹介。時折出てくる「but、しかし」などの日本語が表現を柔らかくしている