2019年2月25日よりスペイン・バルセロナで開催された「MWC19」に合わせて、スマートフォンメーカー各社から最新のスマートフォンが次々と発表されました。そうした中から2019年のスマートフォントレンドをけん引するいくつかの要素をチェックしてみましょう。

「フォルダブル」より「パンチホール」に注目

世界最大の携帯電話の総合見本市イベント「MWC19」が、2019年2月25日から開催されました。毎年このイベントに合わせて、多くのスマートフォンメーカーが新機種を発表することから、MWCは2019年のスマートフォントレンドを見る上でも注目されるイベントとなっています。

では、2019年の「MWC19」で発表・展示されたスマートフォンからは、どのようなトレンドを見て取ることができるのでしょうか。

1つはやはりスマートフォンの顔となるディスプレイです。今回のMWCに合わせる形で、サムスン電子が「Galaxy Fold」、ファーウェイが「HUAWEI Mate X」と、相次いでディスプレイを直接折りたためる、”フォルダブル”と呼ばれるタイプのスマートフォンを発表したことが大きな注目を集めました。

  • ファーウェイの折り畳みスマートフォン「HUAWEI Mate X」。ディスプレイを直接折り曲げられるというインパクトで大きな注目を集めている

確かに、ディスプレイを直接折りたためるというインパクトは非常に大きく、未来を感じさせることから将来的なトレンドとなる可能性を秘めていることは確かです。しかしながらいずれも価格が20~30万円と、スマートフォンとしては非常に高額であることから、2019年中に爆発的な人気を獲得するとは考えにくいでしょう。

全画面化への工夫が光る「ポストノッチ」

では、折り畳み以外の変化として挙げられるのは何か……というと、一言で表すならば「ポストノッチ」ということになるでしょうか。

アップルの「iPhone X」登場以降、フロントカメラ部分の左右を切り欠いた“ノッチ”のあるデザインを採用する機種が急増し現在のトレンドとなっていますが、フルスクリーンで動画などを楽しむ際には違和感もあることから、ノッチの存在に不満を抱く人も少なくありません。そこでスマートフォンメーカー各社も、ノッチのないデザインを実現するべく新たな取り組みを推し進めているのです。

中でもその本命とされているのが、サムスン電子が発表した「Galaxy S10」シリーズで採用された「パンチホール」と呼ばれるもの。これはディスプレイのフロントカメラ部分だけをくり抜いたディスプレイのことで、ノッチで目立っていた黒い切り欠き部分がなく、フルスクリーンでもノッチほどの違和感を抱きにくくなっている訳です。

  • サムスン電子の「Galaxy S10」。ノッチによる違和感をなくすべく、右上のフロントカメラ部分だけをくり抜いた「パンチホール」と呼ばれる新たなディスプレイデザインを採用している

パンチホールはGalaxy S10シリーズのほか、ファーウェイの「honor View 20」などでも採用されており、今後はさらに採用機種が増えると見られています。それだけに、2019年にはパンチホールスマホが市場をにぎわすことになるかもしれません。

メインカメラは3眼が当たり前に

ディスプレイと並ぶスマートフォンの重要な要素であるカメラに関しても、新たなトレンドが生まれています。一言で表すならば、背面のメインカメラの“3眼化”が急速に進んでいるのです。

3つのカメラを搭載することで、超広角撮影や望遠撮影などがしやすくなる3眼カメラは、2018年にファーウェイが「HUAWEI P20 Pro」で採用されたことで大きな注目を集めました。それから約1年が経過したMWC19では、その3眼カメラがファーウェイ以外のスマートフォンへも急速に広がっている様子を見て取ることができました。

実際、先に触れたGalaxy S10/S10+や、LGエレクトロニクスが2019年2月24日に発表した新機種「LG G8 ThinQ」、2019年2月25日に発表したソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1」にも3眼カメラが搭載。フラッグシップモデルは3眼が当たり前、という状況になりつつあるのです。

  • ソニーモバイルコミュニケーションズの新しいフラッグシップモデル「Xperia 1」。単眼カメラにこだわっていた同社が3眼カメラを採用したのには驚きがある

3眼カメラを採用しているのはハイエンドモデルだけではありません。ミドル・ローエンドクラスのスマートフォンを提供し、日本にも進出しているフランスのWikoも、2019年2月25日に発表したミドルクラスの新機種「View3」「View3 Pro」で、やはり3眼カメラを採用しています。

  • Wikoの新機種「View3 Pro」。249ユーロ(約3万1500円)からと比較的低価格なミドルクラスのモデルながら、背面には3眼カメラを採用している

View3シリーズのようなミドルクラスのモデルが3眼カメラを搭載したということは、今後低価格モデルにも3眼カメラが急速に広がり、トレンドを作り上げる可能性が高いと見ることができます。3眼カメラは撮影の幅を大きく広げる存在となり得るだけに、カメラにこだわりを持つ人には嬉しい進化といえるのではないでしょうか。

真のトレンドは「5G」、でも日本は1年以上お預け

そしてもう1つ、今後スマートフォンの大きなトレンドとして注目されるのが、次世代通信規格「5G」に対応したスマートフォンです。5Gでは現在主流の4Gよりも通信速度が大幅に向上するだけでなく、ネットワーク遅延が小さくオンラインゲームも快適に楽しめるなど、付加の大きい大容量コンテンツをスマートフォンでより利用しやすくなると言われています。

5Gは米国ではすでにサービスを開始しており、2019年には中国や韓国、そして欧州などでもいくつかのキャリアが5Gのサービスを開始する予定です。それゆえ海外では2019年が「5G元年」とされており、MWC 2019ではそれに合わせるべく、5G対応スマートフォンの発表ラッシュとなっていました。

実際、サムスン電子はGalaxy S10シリーズの5G対応モデルとして「Galaxy S10 5G」を発表したほか、LGエレクトロニクスが「LG V50 ThinQ」、ZTEが「AXON 10 Pro 5G」を発表。ファーウェイも折り畳みスマートフォンのHUAWEI Mate Xを5G対応スマートフォンとして投入するとしています。

  • LGエレクトロニクスの5G対応スマートフォン「LG V50 ThinQ」。専用のカバーを装着することで2画面スマートフォンとしても利用できるユニークな機能も用意

中でも注目されるのは、中国のシャオミが発表した「Mi MIX3 5G」です。これは5Gに対応したスマートフォンながら、価格が599ユーロ(約7万6000円)と比較的リーズナブルな価格を実現しているのが特徴。幅広い端末のバリエーションが用意される可能性が高いことは、5Gの普及を促進する上でも注目に値します。

  • シャオミの5G対応スマートフォン「Mi MIX3 5G」。5G対応の高性能チップセットを搭載しながら、599ユーロ(約7万6000円)と購入しやすい価格を実現しているのが特徴だ

ですが、本で5Gの商用サービスが始まるのは2020年からであるため、これらの5G対応スマートフォンが日本に投入される可能性は低いと言わざるをえません。5Gという2019年の真のトレンドに、日本では1年以上触れられないというのはとても残念なところです。