NTTドコモ回線とソフトバンク回線を利用した格安スマホを展開するLINEモバイルが、新たにau回線にも対応します。この結果、2019年上半期にはドコモ、ソフトバンク、auのネットワークが選べるMVNO事業者となる見込みです。消費者にはどんなメリットが? 記者発表会の模様をお伝えしていきます。
ついに3キャリアに対応
もともとLINEモバイルは、ドコモ回線を利用するMVNO事業者として2016年9月にサービスを開始しました。資本業務提携したソフトバンクの回線に追加対応したのは2018年7月のこと。LINEモバイル 代表取締役社長の嘉戸彩乃氏は「ドコモかソフトバンクか選べるマルチキャリアとなったことで、新規申し込み件数は大きく伸びました。月間純増数は(2018年6月と比較して)3倍にもなっています」として、ソフトバンク効果を強調します。
そんなLINEモバイルが、新たにau回線にも対応します。詳細は2019年4月に発表予定ですが、全回線で同じ料金プランになる見込み。3キャリアに対応するメリットとして、嘉戸社長は「誰でもSIMロック解除なしに、お使いの端末そのままでLINEモバイルに乗り換えることが可能になります」と話します。
具体的には現在、ドコモ、ソフトバンク、auのいずれかと契約中のユーザーも、使用中のスマホのSIMロックを解除せずに、ただLINEモバイルのSIMカードに挿し替えるだけで、サービスを乗り換えられます(キャリアとの契約を解除せず、DSDS対応のスマホに2枚目として使用する方法も考えられるでしょう)。
スマホの買い替えサイクルが長くなり、愛着のある端末を長く使いたいと考えるユーザーが増えている昨今ですから、この3キャリア対応はLINEモバイルにとって追い風になりそうです。
新戦略『誰でも』宣言とは
LINEモバイルは、新戦略「誰でも」宣言として、誰でも始めやすく、誰でもお得になる施策を用意していく考えです。
2018年11月から展開しているSNS使い放題のプランが、誰でも基本利用料300円で利用できるキャンペーンも引き続き提供していく方針。これについて嘉戸社長は、やや皮肉混じりに以下のように説明しました。
「大手キャリアが提供する割引キャンペーンは、適用条件が複雑です。例えば、毎月いくらでスマホをお使いになれます。でも、それは2年契約をして、家族割やサービスとのセット割を適用させ、かつ光回線の契約を結んだユーザーが対象です、といった具合。LINEモバイルでは、そういうことはしません。キャンペーンは『誰でも』適用されます」(嘉戸社長)
キャリア批判のようにも受け取れますが、料金プラン、割引キャンペーンなどを誰でも理解できるシンプルな形で届けたい、という意図なのでしょう。このほか、リアル店舗の拡充によって、「誰でも」サポートを受けやすくする方針です。
オンラインの問い合わせに抵抗を感じるようなユーザー層に向けても、身近なショップに立ち寄って相談できるよう体制を整えていきます。なお、即日開通に対応した店舗は600カ所以上に拡大中。嘉戸社長は「ショップを垂直立ち上げできるソフトバンクさんの力をお借りして、MVNOとしては最大級の拠点数になりました」と報告します。
さらに、毎月どこかの水曜日にラッキーなことが起こる「らっきー★ふぇすてぃばる」という取り組みもスタートします(期間は2月20日から3月末まで)。こちらはLINEモバイル利用者、およびLINEモバイルへの加入を検討中の「誰でも」参加が可能とのことでした。
新規ユーザーの囲い込みが激しくなる春商戦に向けて、キャンペーンのてんこ盛りとなった今回のLINEモバイルの発表会。最後に、他社からの乗り換えで「LINEフリープラン」を選んだユーザーの10人に1人、月額基本利用料を1年間タダにするキャンペーンも発表されました。開催期間は、2月20日から3月末までとなっています。
本田翼さん「子どもの両親が納得して出してくれる金額」
発表会には、テレビCMに出演中の本田翼さんがゲストに。月300円で利用できるLINEモバイルのキャンペーンについて、「私は小学生のとき、お小遣いが月500円でした。それでも払えて、お釣りがくるというのは革新的。中高生ならご両親も納得して出してくれる金額だと思うし、スマホに挑戦したいけど……というシニアの方にも喜ばれるのでは」とコメントしました。
赤字覚悟でやっている!?
質疑応答では、記者からの質問に嘉戸社長が回答していきました。
総務省が「動画SNS見放題」といったプランについて規制を検討する動きを見せていることについては、「まだ正式なガイドラインが出たわけではありません。それを見てから対応を検討していきます」と回答。
大手キャリアが料金プランの値下げを検討していることについては「まだ詳しいことは何も言えない状況ですが、さすがにLINEモバイルの月300円という水準までは下げないだろうと認識しています。LINEモバイルとしては、マルチキャリアを進めつつ、LINEユーザー7,900万人の基盤とLINEモバイルの接点を模索し、また効率よく即日開通に対応した店舗を展開、そして圧倒的な低価格で提供していく、という方針でがんばっていきます」と説明します。
10人に1人は基本利用料を無料にするキャンペーンなどは支出が大きいが、経営戦略はどうなっているのかという質問には、「現在は、まだまだLINEモバイルの認知度を上げるための投資フェーズ。今回のキャンペーンも、サービスをお客さまに知っていただく良い機会と考えています」と話すなど、赤字は織り込み済みの様子。その上で今後、回線の契約単体で黒字化も目指していくと明らかにしました。
SIMロック解除をしないで済むメリットについて改めて聞かれると、「そもそもSIMロック解除という行為をご存知ないお客さまも多い。そうした方々にも、お使いの端末でそのまま安くなりますよと分かりやすく説明できます。そうした部分が大きいのでは、と認識しています」としました。
ソフトバンクとのシナジーについては、「ネットワークの運用について、ソフトバンクのノウハウを生かしながらやれています。即日開通できるショップの拡大も、ソフトバンクさんの営業網あってこそ。iPhoneなどの端末調達も一緒にやっています」。
このほか、インターネットの品質を左右するネットワーク帯域の増強について、「頻度を上げて細かく対応中です。コストとの兼ね合いもあるので、帯域の量を買うだけでなく、どうやったらユーザーの体感が向上するか、技術的に制御しながらチューニング中です。いかにご迷惑をかけず、皆さんの体感を良くするか。MVNOならではの取り組みをやっています」と答えていました。