日本HPが事業説明会を開催しました。PCやプリンターといった分野で、2019年にはどんな新製品・新サービスが登場するでしょうか。

  • 日本HPの事業説明会。創立80周年を迎えたHPの歴史にも言及がありました

成長の原動力は?

日本HP 代表取締役の岡隆史氏は、まずグローバルにおけるHPの業績(2018年度)を紹介しました。売上は約6.4兆円で12%成長を達成、全地域・全事業で成長しているとのこと。

日本国内のコア事業、PC分野については、市場を大きく上回りました。「国内シェアは15%まで伸びました。グローバルにおけるHPのシェア23%に追いつくべく、今後も勢いを加速させていきます」(岡氏)。

  • 日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏

    日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏

  • 前年比成長、国内シェアともに、市場の平均を大きく超えて好調であると強調します

HPのブランドメッセージは「Keep Reinventing」。新しいイノベーションを追求し続ける、という企業方針により、これまでたくさんの”世界初”の製品を世の中に生み出してきた、と岡氏。「今までにないモノをつくり、新しい便利を提供するということを個人、ビジネスの両方で展開してきた。これが成長のベースになっていると理解しています」としました。

HPでは、どのようなアプローチで技術開発を進めているのでしょうか。岡氏は「進化」「革新」「メガトレンド」という3段階のイノベーションアプローチがある、と説明します。「進化は、今日からおよそ2年先までの段階。消費者のニーズ、市場のトレンドを先読みしながら、現在の製品をブラッシュアップさせます。出始めたばかりの新しい技術については今後を見定めながら、先進的な製品に取り入れていきます」(岡氏)。

  • HPでは、時間軸を3つの段階に分けて技術開発を進めています

そして2年~10年先は、革新の段階。未来を見据えた研究を行っている専門チーム「HP Labs」と一緒に、市場の需要を考慮しながら応用研究を実施します。これが20年先となると、メガトレンドの段階に入るそう。

「15年、20年、30年先になると、なかなか予想は当たらないもの。とある著名な人でさえ、12年ほど前には『iPhoneは流行しない』とコメントしていました」(岡氏)。そこでHPでは15年先の将来を想像してストーリーをつくり、そこから逆算する形で、いま自社が有している資産、技術的な優位性をどのような分野で生かせていけるかを考え、段階的に投資を進めていくと説明しました。

2018年の国内PC事業を振り返り

日本HP 専務執行役員の九嶋俊一氏は、PC事業の戦略について説明しました。2018年の国内PC事業を振り返り、個人向け製品については「デザインを強化したプレミアム商品、そしてゲーミングPCの分野で大きな成長を果たした」と総括する九嶋氏。

プレミアムPC市場では、2倍成長を記録したとのことです。法人向け製品については、デザイン+セキュリティの強化が事業の成長につながったと述べました。

  • 日本HP 専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の九嶋俊一氏

    日本HP 専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の九嶋俊一氏

HPの個人向けPCといえば、2018年10月に開催した大規模な発表会にて、革張りのノートPC「HP Spectre Folio 13」、デザインを刷新した2in1 PC「HP Spectre x360」シリーズが話題を集めました。九嶋氏は「HP Spectre Folio 13は、外装に職人の手によるレザーを採用したデザイン性の高い製品。2月には、新色のボルドーバーガンディを追加します」とアピールしました。

  • HP Spectre Folio 13
  • HP Spectre Folio 13
  • HP Spectre Folio 13
  • HP Spectre Folio 13
  • 会場に展示されていた、外装にレザーを採用したHP Spectre Folio 13。2月には、新色のボルドーバーガンディ(キーボードはシルバー)が追加されます

このほか、eスポーツにも注力していると紹介。国内ゲーミングPCの出荷台数で1位を獲得したことに触れました。

  • 日本HPでは、eスポーツに注力しているチームも存在。国内ゲーミングPCの出荷台数では、2018年にトップを獲得したとのこと

また、いまHPが法人向けPC市場で積極的に取り組んでいるのは、セキュリティ強化。2018年には「レジリエンス機能」を訴求しました。レジリエンスとは回復力、復元力といった意味合いの言葉。トラブルが起こった際に、元の状態へと安全に戻せる機能であると説明します。

「ハードウェアのレイヤーでこのレジリエンス機能を実行することで、PCを確実に回復させます」と九嶋氏。まだ市場の認知度は低いものの、2019年はさらに取り組みを加速させていく考えです。

  • HP Spectre x360
  • HP Spectre x360
  • デザイン性の高い2in1 PC「HP Spectre x360」シリーズも展示されていました

2019年の国内PC事業の展望

2019年の展望、まず個人向けPC事業は、13インチのプレミアムノートPCが急成長したことを受けて、2019年は15インチのプレミアム製品も拡充していく方針です。

法人向け事業では、セキュリティ市場が変革することを見据えた取り組みを進めていきます。九嶋氏は「PCのセキュリティは今後、ほぼ全ての企業の経営課題になります。そのキーワードとなるのがNIST。米国の政府機関が企業に対して求めるセキュリティのガイドラインになっているもので、米国市場に展開する日本の企業はもちろん、その2次、3次のサプライヤーにも影響が考えられます」と説明。今後はPCの選択肢が、そのまま企業のセキュリティに対する判断につながる時代になる、と解説しました。

  • 今後はPCのセキュリティが経営課題になると説明

プリンティング事業は?

グラフィックソリューション事業については、同事業部の小池亮介氏が説明。まず市場規模について「世界の総印刷枚数の90%超が商業・産業の印刷で、その38%がHPの対象市場」と紹介する小池氏。ダンボール向けの大型デジタル印刷機「HP PageWide T1190 Press」の導入事例や、パートナー企業との直近のユニークな取り組みを紹介しました。

  • 日本HP 小池亮介氏
  • グラフィックソリューション事業について説明する、日本HPの小池亮介氏

3Dプリンティング事業部については、同事業部 事業部長の秋山仁氏が紹介。それによれば、自動車・輸送機関、工作機械・ロボット、医療、コンシューマー製品という4つの業界で、HPの3Dプリンティング事業が生かされているとのことです。3Dプリンターのメリットについて、改めて説明する秋山氏。これまで作製が困難だった複雑な構造の部品が量産できる、樹脂製の部品を採用することで製品を軽量化できる、メーカーが頭を悩ませてきた金型の保存期間といった問題も解決できる、としました。

  • 日本HP 秋山仁氏
  • 3Dプリンティング事業部について説明する、日本HPの秋山仁氏。会場には、HPの3Dプリンティング技術で作製された精巧な部品が展示されていました

日本HP 代表取締役の岡氏が強調していたのは、近未来のグローバルにおける環境変化を想定した上で、事業の持続可能性について検討を続けているということ。世界人口は2050年までに98億人になるといわれる中、増殖する巨大都市、資源の枯渇、そうした環境でいかに事業を展開していくべきか――。HPでは、そうした広い視野でも分析を進め、得意分野への投資を加速させていると説明していました。