例年通りなら2019年もAppleは、初夏に開発者カンファレンスWWDCで4つのOSのアップデートを発表し、秋のiPhone新製品発売のタイミングで正式版をリリースするでしょう。では、iPhoneのフラッグシップ製品以外にどのような製品が登場するのか。Appleは将来の製品やサービスについて固く口を閉ざしているので、全ての報道は噂に過ぎませんが、まずは実績のあるアナリストやジャーナリストに絞り込んで噂されている製品をリストしてみました。

  • iPhone SE新モデル
  • iPad mini新モデル
  • AirPods新モデル
  • iMac新モデル
  • 新Mac Pro
  • 新Apple Display
  • オーバーヘッド・スタイルのスマート・ヘッドフォン
  • スティック型のApple TV
  • AirPower
  • サブスクリプション型のTVストリーミングサービス

これらの中で唯一Mac Proはプロフェッショナルユーザーのニーズに応える新モデルの提供を2017年にAppleが約束しており、2019年に詳細が公表される見通しです。iMacは2018年に誕生20周年を迎えました。今のAppleは"○周年"にこだわらず、適切なタイミングにリフレッシュを実行しているので、20周年だからといってデザイン刷新にはなるとは限りません。ただ、現行のデザインが採用されたのは2012年で、iMacの歴史で最も長いデザインになっており、大幅刷新の期待が高まっています。

  • 2018年のMacラインナップでは、大きなデザインの刷新はありませんでしたが、これまでのように数年遅れの製品がラインナップに混じってはいません

    2018年のMacラインナップ、大きなデザインの刷新はありませんでしたが、これまでのように数年遅れの製品がラインナップに混じってはいません

2019年もiPhoneの新製品が大きな話題を呼びそうですが、5G対応は2020年以降になる見通しが報じられています。SamsungがGalaxy Sシリーズの10周年に合わせて、次世代的なスペックの製品を投入してきそうです。でも、それを意識してAppleがスペックで対抗することはないでしょう。

Appleは自身の基準で、新しい技術を優れた体験にまとめられた段階で提供します。とはいえ、5Gはモバイルの可能性を大きく広げる変化になり、5G時代に備えた動きがAppleからも出てくるはずです。例えば、噂されるサブスクリプション形式の新サービスがその1つと言えます。

「サービス」は、ここ数年Appleの中で最も成長著しい事業であり、二桁の売上高の伸びを続けています。そのサービスに関してCEOのTim Cook氏が今年夏、2020年度の売上高を2016年度の倍に伸ばすという目標を掲げました。2016年度は243億4,800万ドル、その倍だと約487億ドルです。これは昨年のFacebookを上回る規模であり、その目標を実現する飛躍のためには2019年のステップが重要になります。

  • 2018年3月に雑誌のNetflixと呼ばれる購読サービスTextureを買収、サブスクリプション・サービスに組み込む可能性が指摘されています

Appleの新サービスに関しては、Netflixのようなビデオコンテンツ配信サービス、雑誌の定期購読サービス、音楽やビデオ、ニュースなどパッケージにしたサービスなど、様々な噂が飛び交っていますが、どのようなサービスであれ、ポイントはサブスクリプション・モデルであることです。

例えば、音楽や動画を楽しむにあたって、以前はCDやDVDといったモノを購入・所有して楽しむスタイルが一般的でした。サブスクリプション・モデルにおいてユーザーは、コンテンツを所有するのではなく利用します。契約期間は好きなだけ聴いたり見たりできる、いわば“体験”を手に入れる消費スタイルです。今もまだ所有を求める消費者はたくさんいますが、TV放送よりもNetflixを好むようなモバイル世代は体験重視であり、そうした層の増加によって消費者の価値観のシフトが起こっています。

前編の最後に「Appleが同社のイメージを変えるような一手を打ってくる可能性がある」と書きましたが、Appleに対する人々のイメージというとMacやiPod、iPhoneなど、デザインに優れたハードウェア製品を提供する企業だと思います。従来のAppleユーザーにとって、Apple製品は所有するもの。ハードウェアとソフトウェアであり、サービスはそれらに付随するものというイメージだと思います。

では、サービスをメイン製品としないAppleはモバイル世代の消費者に対して不利なのかというと、Appleはハードウェアを販売する企業ですが、同社がユーザーに提供しているのは優れた"体験"です。Appleは今年、「Behind the Mac」というマーケティングを展開しました。Macの広告キャンペーンですが、ハードウェアには全く触れず、音楽作りやデジタルアート作成、事故を減らすためのアプリ開発、障害の克服といったMacを使うユーザーの体験を伝えています。

そんなAppleが体験重視のモバイル世代のためにサブスクリプション・サービスに取り組むのは自然なことと言えます。「HomePod」のようにサービスを中心に、ハードウェアやソフトウェアをデザインした製品がこれから増えるかもしれません。数年後、サービスそのものがiPhoneに代わるAppleの成長ドライバーになっても不思議ではありません。