• ”ダイナブック構想”を打ち出したアラン・ケイ氏のサイン入りDynaBook J-3100SS

Dynabook株式会社が、2019年1月1日からスタートすることになった。

東芝グループでPC事業を行なっていた東芝クライアントソリューション(TCS)の株式の80.1%を、2018年10月1日付で、シャープが取得して子会社化。シャープ傘下での復活を目指すなかで、TOSHIBAのブランドを残さず、そして、SHARPのブランドも使わずに、dynabokの製品名を、あえて社名に使うことに決めた。

シャープ取締役副社長執行役員兼東芝クライアントソリューション代表取締役会長の石田佳久氏は、社名変更の理由を「独立性を高めていくことが社名の背景にある」と語る。

  • シャープ取締役副社長執行役員兼東芝クライアントソリューション代表取締役会長の石田佳久氏(左)と、東芝クライアントソリューション代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏(右)

本記事では、社名を「Dynabook」、ブランド名やビジョンを「dynabook」と表記しています

石田会長「東芝の名前を残すことに違和感」

実は、株式取得において、dynabookのブランドとともに、数年間に渡ってTOSHIBAブランドを使い続けることができる条項が盛り込まれていた。だが、「シャープが80.1%の株式を取得し、事業を継続する上で、東芝という名前を残すことには違和感があった」と石田会長は説明。「東芝ノートPCの歴史を辿り、議論をした結果、dynabookという言葉をもう一度前面に出したいと考えた」と、今回の社名変更に至る経緯を語る。

dynabookのブランドは、パーソナルコンピュータの父と呼ばれるアラン・ケイ氏が提唱した理想のコンピュータである「Dynabook」にちなんだものであり、東芝は、1989年に発売した世界初のノートPCブランドにdynabookを採用していた。

石田会長は、「もともとdynabookは、ハードウェアに対する期待を込められた言葉であった。だが、時代とともに、環境が変化し、技術が進化するなかで、dynabookという言葉も進化させたいと考えている。dynabookの単語に込められた意味や、言葉自体の進化を、アラン・ケイ氏も望んでいるのではないか」とし、新会社では、新たなDynabookの姿を模索していく考えを示してみせる。

では、新たなDynabookとはなにか。

それは、Dynabook株式会社が掲げる「コンピューティングとサービスを通じて、世界を変える」というビジョンのなかにありそうだ。

  • Dynabook株式会社が掲げたビジョン

ノートPC以外の領域へ、新生Dynaboookが目指すもの

Dynabookでは、ノートPCが中心となっている現在の状況から、デスクトップPC、ワークステーション、サーバー、エッジデバイスへと領域を拡大する一方、これまでの東芝のPC事業で展開してきたソフトウェアを強化し、業態、場所、シーンに応じたサービスメニューを用意。さらには、シャープのスマートフォンやスマート家電との連携を図るほか、オフィスソリューションとの連携、AIoTプラットフォームであるCOCORO+との連携、データセンターサービスの利活用なども盛り込む。

  • コンピューティングとサービスを連携させ、多彩な商品を展開

つまり、ハードウェアを提供するPCメーカーとしての役割だけでなく、ソフトウェアやサービスと連携した提案によって、事業の枠を拡大し、新たなDynabookの価値を生もうというわけだ。

東芝クライアントソリューション代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏は、「dynabook as a Computingとdynabook as a Serviceにより、人に寄り添う、社会を支える真のコンピューティングと、新しい付加価値・サービスを創出する」と、同社の新たなビジョンを示してみせる。

また、石田会長は「PCの枠を超えたコンピューティングを提供したい」と前置きしながらも、「PCのプラットフォーム上に、オープンなサービスを取り込むことで、AIoTに関連した新たなサービスをつくることもできる。PCの上で新たなビジネスを展開できるサービスを創出できる可能性もある。そうしたものをいち早く取り込み、Dynabookが提供する製品全体の付加価値を高めていきたい」とする。

当面は、ノートPCを中心としたPC事業が柱になるが、これにAIoT関連事業、ソフトウェアを中心としたサービス事業という2つの事業をどう絡ませるかが、新たなDynabookの道筋を決めることになりそうだ。

  • ハードウェアとサービスの融合で、多様化するニーズに応じていく

石田会長は、「PC以外の戦略において、まだ具体的な商品がまだ見えているわけではない」と語るが、PCの運用を一括請負するライフサイクルマネジメントサービスや、センシング技術を活用した故障予兆サービス、8Kの高精細画像解析技術をベースとした警備監視システム、5Gによって実現するクラウドとエッジによる分散処理システム、シームスなデータ連携により、時間と場所の制約から解放するゼロクライアントのほか、遠隔医療や遠隔操作を活用した新たなサービスの創出し、ホームやオフィス以外にも、工場現場、流通現場、小売り現場で活用できる製品やサービスを提供する考えを示している。こうしたPC事業以外の領域において、いかに早く成果を出せるかが注目される。

とはいえ、当面の成長を担うことになるのは、やはりPC事業である。