AVIOTブランド、知ってる?

アビオット? 初めて聞くなあ……という人が大半でしょう。無理もありません。ブランド初の製品が完成したのは2017年9月、たった1年前です。しかもその製品は、私こと海上忍がプロデュースしたRaspberry Pi用オーディオケース「CASE 01」という一風も二風も変わったものでした。

AVIOTは、オーディオ機器の輸入販売を手掛けるバリュートレードのプライベートブランド。ネーミングはAV(Audio & Visual)とIoT(Internet of Things)をかけたもので、インターネットに接続したAV機器が偏在する(ユビキタス)、といったイメージでしょうか。IoTデバイスの一種といえるRaspberry Piを利用した本格オーディオ機器をつくりたい、という私の熱意がかわれて「CASE 01」を製品化する運びとなり、図らずもそれがAVIOTブランドの初号機となったわけです。

  • AVIOT

    AVIOT最初の製品、Raspberry Pi向けアルミ削り出しケース「CASE 01」。I2S接続のDACボード「DAC 01」との組み合わせによる音は極上ですよ

今回発表の完全ワイヤレスイヤホン3モデルと同様、「CASE 01」の製造は中国・深セン近郊で行いましたが、日本在住の私が基本設計から進行管理までを務めました。現地の中国人コーディネーターと頻繁にチャットで連絡を取り合い、事細かに指示を出したのです。文章(英語と簡体字のチャンポン)のやり取りでらちがあかない場合は、自ら3Dモデリングソフトを駆使して3Dプリンタ用データを作成するなど苦労もありましたが、それでも完成に漕ぎ着けたのは頼もしいコーディネーターの協力があってこそ。

深センには星の数……ほどといえばオーバーですが、エレクトロニクス関連企業がたくさんあり、技術レベルや真面目さもピンからキリまで。"いい工場"との出会いは決して偶然ではなく(ヒドい工場の話もいろいろ耳にします)、人脈で決まります。今回の完全ワイヤレスイヤホン企画に私は関与していませんが、聞けば「日本側の設計意図を正確に製品へ反映できる高い技術力の工場を選んだ」(バリュートレード 代表取締役 土山裕和氏)とのこと。だから、最先端の完全ワイヤレスイヤホンが誕生わずか1年というブランドから登場しても、私には違和感がありません。

完全ワイヤレスイヤホンの開発に二の足を踏むメーカーも多いなか、一度に3モデルを発表する強気の姿勢を見せた「AVIOT」。ブランドとしての歴史は浅いものの、エンジニアリングにかける情熱は眩しいほどで、それが製品の完成度として現れています。特にTE-D01bは最新のワイヤレスチップをいち早く採用し、aptX対応など、同価格帯の完全ワイヤレスイヤホンよりもひとつ上のレベルに到達しています。機会があれば、ぜひ試聴してみてください。