A10ネットワークスはこのほど、年次イベント「A10 Forum 2018」を開催した。同イベントは、サービス事業者や企業のセキュリティ・ネットワーク担当者を対象に、セキュリティとアプリケーションネットワーキングにおける最新トレンドを紹介するもの。

国内は「5G/アプリケーション配信」「マルチクラウド」「セキュリティ」に注力

A10ネットワークス 日本法人代表 兼 社長 米国本社バイスプレジデント 兼務 川口亨氏

基調講演では、初めにA10ネットワークス 日本法人代表 兼 社長 米国本社バイスプレジデント 兼務 川口亨氏が、国内の概況を説明した。2013年から2017年にかけての平均成長率は、グローバルが14%のところ、日本は15%を達成しているという。

グローバルで2017年度の売上を見た場合、日本は22%と、49%を占める米国の第2位につけており、川口氏は「日本は米国本社に直接レポートする体制を継続しており、重要なポジションを確保している」と述べた。

また、2018年から2019年にかけて、国内で注力する分野として「5G/アプリケーション配信」「マルチクラウド」「セキュリティ」が紹介された。例えば、マルチクラウドについては、管理プラットフォーム「Harmony Controller」の新バージョンを発表し、オンプレミスとマルチクラウド環境でアプリケーションサービスとセキュリティを一元管理できるようにした。また、セキュリティについては、5G向けセキュリティソリューション「Thunder CFW 5G-GiLAN ソリューション」を発表した。

そのほか、国内における動きとして、パートナーシップの拡大が紹介された。今年8月からは、同社製品を利用したサービスを展開する事業者を支援する「Security Alliance Program」がスタートしている。

新たなビジネスチャンス「5G」に関する戦略とは

A10 Networks 創業者兼CEO リー・チェン氏

グローバル全体の事業戦略やソリューション、ソリューションロードマップについては、A10 Networksの創業者兼CEOであるリー・チェン氏が説明を行った。

チェン氏は、同社の戦略として、管理プラットフォーム「Harmony Controller」に機械学習を投入して、自動化や詳細なデータ分析を実現していることを紹介した。Harmony Controllerにおいて、ADC(アプリケーション配信コントローラ)、SSLi(SSL可視化製品)、Gi/SGiファイアウォールなど、同社の製品をすべてコントロールし、可視化する。

加えて、チェン氏は同社が注力していることとして、柔軟性の高い製品を提供していることを挙げた。プライベートクラウド、パブリックぅラウド、ハイブリットクラウド、オンプレミスといった「場所の柔軟性」、アプライアンス、仮想アプライアンス、ベアメタル、コンテナといった「提供形態の柔軟性」に加え、ライセンスもサブスクリプションとパーペチュアルから選択することが可能だ。

  • A10が提供するソリューション

同社の主力事業の1つである「DDoS(Distributed Denial of Service )の防御」を実現するソリューションとして、「Thunder TPS」が紹介された。

「Thunder TPS」は大規模DDoS防御専用アプライアンスだ。今年6月に、Thunder TPSにおいて、クラウドサービス・プロバイダーのDNSサービスを保護する「ノンストップDNSソリューション」が追加された。同ソリューションの中核となるのが、バックエンドのDNSサーバを保護する「DNSキャッシュ」機能だ。同ソリューションは、2017年第4四半期以来、Azureで稼働中だという。

チェン氏は、新たにビジネスチャンスがある分野として、IoTの広がりとともに成長が見込まれる「5G」を挙げた。ただし、「5Gの利用拡大はいいことばかりではない」と指摘した。というのも、攻撃者から見ると、5Gの利用拡大により、攻撃対象のデバイスが増え、攻撃のチャンスも増大することになるからだ。

そこで、同社としては前述した5G-GiLANソリューションによって、5G環境のセキュリティを高めようとしている。チェン氏は、フォーティネットとF5ネットワークスと競った上で、同ソリューションが韓国のTier1のモバイルサービスプロバイダーに導入されたことを紹介した。

そして、2019年にリリース予定の新製品としては、アプリケーションサービスゲートウェイThunderシリーズの独自OS「ACOS」を挙げた。ACOS 2.6/2.7.2.8を継続してサポートしながら、4.1.4 Goldをリリースする予定だという。「4.1.4 Gold」ではHarmony Controllerをサポートして可視性を提供するなど、さまざまな新機能を提供する。

東京オリンピックが開催される2020年に商用化を見込まれるということで、5Gに関する技術開発が進んでいる。その一方、オリンピックやラグビーワールドカップの開催を控える日本は、サイバー攻撃者にとって格好のターゲットとも言われており、DDoSの脅威は高まっており、同社が注力する分野は日本市場にとっても重要な市場と言えよう。