正直なところ、年々、iPhoneのレビューは難しさを増している。

現在はまだ有効化されていないが、eSIM内蔵により、2つのキャリアの回線を同時待ち受けできる「DSDS」(dual-signal dual-standby)をサポートしたのも今回の強化ポイントに一つだとは言える。日本でも、複数の回線を1台のiPhoneで利用したり、海外に出かけた際にSIMを購入しなくても、現地の有利なデータプランを利用したりできるようになるのは魅力的だ。

  • iPhone XS Maxゴールドモデルを、iPhone XSで撮影

しかし、機能面での強化を分かりやすく伝えるのは困難な部分が出てきている。

進化はより内部へと潜り込み、プロセッサの性能でも測れない、機械学習処理能力へと深化している。実際に利用するアプリケーション上でも、これらのアルゴリズムの善し悪しや処理能力は、表に出てこない価値となっているのだ(もちろん、ユーザーに気づかれないうちに高度なテクノロジーが使われ、日々の生活にコンピュータの向上した性能が活用されることはある種の理想であり、Appleが目指すところでもある。カメラ機能に細かいコントロールがなく、依然としてシャッターボタンとモード切替があるだけであることからも、より、シンプルにというAppleの強い意志を感じるが)。

また、本体のデザインについても言及できることがあまりない。「角が落とされた金属のフレームを持つガラス板」以上の表現ができないほどシンプルになっており、あまり歓迎されていないカメラの出っ張りがむしろアクセントになってしまっているほどだ。

しかし、iPhone XSシリーズには、新たな要素が加わった。iPhone XS Maxという大画面モデルの登場と同時に、シリーズとして初めてのゴールドカラーが採用されたのだ。新色として登場したゴールドカラーは、うっとりとするようなエレガントさを放つ。派手な金色ではなく大人しい印象ではあるが、光を反射すると印象強く存在感がある。価格に見合った高級感をたたえている。

その高級感は、前述の「長持ち」という性能を支えるものともなる。今回のiPhone XSは我々の想像を超えてコンセプチュアルな製品に仕上げてきたと評価できるだろう。性能においてもデザインにおいても無欠、それがiPhone XS Maxなのである。

松村太郎(まつむらたろう)


1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura