数年では陳腐化しない性能を理解する上で、最もわかりやすいのがカメラ機能だ。

  • iPhone XS/XS Maxのデュアルカメラシステム。ワイドカメラは、センサーの大型化・高速化によって、素早くDSP・ニューラルエンジンにデータを渡せるようになった

AppleはA12 Bionicのニューラルエンジンと画像処理プロセッサを連携させ、1回のシャッターごとに1兆回の処理を行っていると説明する。もちろん、カメラアプリでシャッターを切るだけでは、その処理能力に気づくことはない。ただ、写真が撮られるだけだ。

  • ニューラルエンジンを用いた画像処理のプロセス

しかし、明らかな違いが見られるのは、新機能「スマートHDR」だ。HDR機能はこれまでも搭載されてきたが、露出を変えた写真を合成することで、明るい部分と暗い部分の双方で、色・ディテールを正確に記録できる仕組みだ。その違いは、何枚か街中で写真を撮ってみるだけでも、気づけるほどだ。

この機能の実現のために、ハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズムによる三位一体の進化が図られた。カメラはセンサーを大型化して画素あたりの受光量を増加させ、さらにセンサーからの情報処理を2倍高速化させ、素早く画像処理プロセッサにデータを渡せるようにしている。これにより、暗所により強く、また機械学習処理を前提としたカメラシステムの入口を整備している。

また、アルゴリズムは、被写体や写真自体の分析を素早く行い、複数の写真の合成を伴うHDRや、ビデオの拡張ダイナミックレンジなどの実現に寄与している。ビデオはライティングが難しく、少しでも逆光になれば人の顔などがどうしても暗く潰れがちだ。しかしiPhone XS Maxでの撮影は、スナップショットでも人の顔がきれいに表現され、編集なしで十分に楽しめる映像が撮れる。

  • iPhone XS Maxで撮影した夕暮れの風景。逆光の中、雲や、手前の建物の影の部分のディテールも再現されている

ポートレートモードも数値モデルを用いて進化しており、被写体と背景を分離する際、背景に対してレンズのボケ味をシミュレーションしたモデルによって処理される。そのため、後から被写界深度を変更する編集が可能となった。

  • ポートレートモードで撮影し、f1.4に被写界深度を調整。撮影後にあとから背景のボケ具合を調整できる

デフォルトはF4.5だが、これをF1.4からF16まで可変でき、後から好みの仕上がりが選べる。筆者は普段、単焦点レンズを組み合わせたミラーレスで写真を撮るが、絞り優先オート、つまりリングでF値をコントロールして撮影しているので、これをiPhoneで、しかも後から調整できるのは驚かされた。

  • ポートレートモードで撮影。逆光ながら、オリーブの葉の緑も確認できる

ビデオは、前述の拡張ダイナミックレンジで、明暗双方のディテールをより細かく再現できるようになっているが、これは毎秒30フレームまでの映像に対応する。得られる映像は毎秒30フレームだがセンサーは60フレームの映像を取得し、合成しながらビデオを記録している。また、720p、1080pではシネマクラスの手ぶれ補正を利用できる。

iPhone XS MaxのカメラとA12 Bionicのニューラルエンジンを最大限に生かしたビデオ撮影モードは、1080p 毎秒30フレームであり、スタビライザーやライトなしで、これまでとは比較にならない映像ができあがる、と期待して良い。