AppleはiPhoneイベントの後半、リサ・ジャクソン氏を登壇させた。このことは、iPhoneを製造・販売する上で、環境への配慮が非常に重要となっていることを端的に表してると言えよう。ジャクソン氏はオバマ政権時代、米国環境保護庁(EPA)長官を務め、Appleでは環境・政策・公共イニシアティブ担当副社長に就いている。

ジャクソン氏は、iPhone XSシリーズ、iPhone XRのロジックボードのスズについて、再資源化されたリサイクル素材を用いていることを明かした。これにより、年間1万トンの鉱石の採掘を減らせるという。また、「Apple GiveBack」プログラムの促進で、古くなった製品を回収し、再資源化することにより、新たな資源に頼らない製品作り、クローズドループの実現を目指している。

Appleは地球環境問題に最もシリアスに取り組んでいるスマートフォンメーカーだ。世界にまたがるAppleの拠点で使用される電力を100%再生可能化したのに加え、今年の春にはこれまで130年間もの間、二酸化炭素を排出する製法で作られてきたアルミニウムを、酸素を排出する新しい製法の実用化へ向けた研究開発のために投資すると発表している。

iPhone XSは999ドルからと高額であり、iPhone XS Maxは512GBモデルで1,499ドルにも達する。それだけの高い価格を説得する材料として、ジャクソン氏は「長持ち」という性能を持ち出した。1つの製品が長く使用できれば、買い換える必要がなくなり、資源を消費しなくて済む。iOS 12を、2013年に発売したiPhone 5sでも動作させるようにしたのもこの施策の一環であろう。

途中の電池交換を伴いながらも、最低限のスマートフォン体験を5年間継続できるのを示して見せたが、そのことは高止まりするiPhoneの価格の裏付けにもなっていた。数年で陳腐化するわけではない性能を提供するからこその価格だ、と言いたいのだ。

iPhone XS Maxを見てみれば、前面・背面がガラスであるためどうしても割れてしまうリスクが残っていたり、フレームも傷つかないわけではない。長持ちするというメッセージを裏付けるには、足りない部分もたくさんある。それでも、少しでも環境のことを気にかけた瞬間、iPhone以外の選択肢がなくなるという事実も見えてくる。iPhoneの環境性能は、ブランドと実際を兼ね備え、競争優位になっていることがわかる。