MVNO市場でシェア拡大中の「mineo」が、新たにソフトバンク回線にも対応します。これまで「格安SIMサービスを利用したいけれど、手持ちのスマホが対応していない」「SIMロックを解除するのが面倒」と考えていた人には、選択肢が増えました。以前に使っていたソフトバンクのiPhoneを、mineoの格安プランで再利用する、といった使い方も考えられますね(最新iOSの対応しだいですが……)。

  • 格安SIMサービスの「mineo」、ソフトバンク回線に対応

    mineoが9月4日よりソフトバンク回線にも対応します。写真は、トリプルキャリアを実現した記念として作成されたという、葵わかなのスマホスタンド(非売品)

SIMロック解除の心理的な壁

MVNO業界で初めてau回線を扱うサービスとして2014年6月に誕生し、2015年9月にはドコモ回線にも対応して業界初のマルチキャリアとなったmineoですが、9月4日から、ついにソフトバンク回線にも対応します。業界初の「トリプルキャリア」を実現する背景には、どんな狙いがあるのでしょうか。登壇したケイ・オプティコム 代表取締役社長の荒木誠氏は「SIMロック解除の壁から、消費者を開放したい」と説明します。

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    ケイ・オプティコム 代表取締役社長の荒木誠氏

ケイ・オプティコムが調べた「SIMロックについて知っているか」では、回答者の約7割が「知っている」と答えました。しかし認知率が上がる一方で、「SIMロック解除を面倒に思うか」を聞くと、半数以上が「わずらわしい」と回答しています。

この結果について、荒木氏は「まだ心理的にSIMロック解除の壁が存在しているようです。消費者は、いま使っているスマホのSIMロックを解除するのではなく、スマホに対応するMVNOを選んでいるんです」と分析します。

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    SIMロックの認知率が上がる一方で、SIMロック解除を面倒に思う消費者も半数超え。手持ちのスマホに対応するMVNOを選んでいる状況があるようです

そこでケイ・オプティコムは、端末はそのままに、SIMカードを差し替えるだけですぐに使えるメリットを訴求していく方針です。「ソフトバンク回線を契約中の、3,978万ユーザーの選択肢になれば」と荒木氏。

対象となる端末ですが、iPhoneは「iPhone 5」以降、iPadなら初代を含む全機種が対応しています。また、Androidなら2017年8月以降の「SIMロック端末」、もしくは「SIMフリー端末」が対応。ケイ・オプティコムは、現ソフトバンクユーザーの78%が利用しているスマートフォン、タブレット端末で使用可能になると試算しています。

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    ソフトバンク回線に対応するのは、iPhone 5以降、iPad全機種。Androidなら2017年8月以降のSIMロック端末、もしくはSIMフリー端末で利用できます

さて、そこで気になるのが利用料金。結論からいうと、ソフトバンク回線を利用するSプランは、au回線のAプラン、ドコモ回線のDプランに比べて、月額にして90円、高い設定になっています(以下すべて税別)。データ専用SIMで提供される料金プランは、以下の通り。

  • 500MBコース:790円/月
  • 3GBコース:990円/月
  • 6GBコース:1,670円/月
  • 10GBコース:2,610円/月
  • 20GBコース:4,070円/月
  • 30GBコース:5,990円/月

SMS対応なら、プラスで180円/月、音声通話対応ならプラスで960円/月となります。

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    利用料金プランの一覧

記念キャンペーンを実施

トリプルキャリア対応を記念して、AプランまたはDプランの新規契約者を対象に、6カ月間、月額基本料金を月額333円に据え置くキャンペーンを実施します。Sプランの新規契約者であれば6カ月間、0円から利用可能になります(いずれも音声通話付きプランに限る)。

また、mineoの長期利用者が対象の「ファンとく」では、抽選で333名にiPhoneの最新機種などの豪華プレゼントを提供するキャンペーンも実施。まったくの余談ですが、葵わかなさん主演の新CMには、新型iPhoneが発売になるとソフトバンクショップの行列に必ず現れるという、あの有名人の姿も。

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    トリプルキャリア対応を記念して、様々なキャンペーンが実施されます

huluも観られるように!

このほか、3つの新たな施策が発表されました。まず、au回線のiPhoneおよびiPadでテザリングサービスが開始されます。時期は2018年10月末からで、利用料は0円。利用可能な端末やSIMサイズは順次、mineo Webサイトに掲載していく予定です。Sプランでもテザリングは可能となっています。

mineoショップの出店拡大も予定されています。福岡(8月下旬)、広島・岡山(9月予定)、大阪和泉(9月4日)に出店するほか、渋谷店の1Fには、9月4日からiPhoneの修理を請け負う「アイサポ」が入る見込みです。「即日SIMカードを渡せる店舗は、全国130店に拡大します。より安心に利用できる環境をつくっていきたい」と荒木氏。

このほか8月8日から、エンタメ系のオプションサービスも拡充されます。電子コミックの「Renta!」を月額280円で、映画、ドラマ、アニメの「hulu」を月額933円で、音楽の「レコチョクBestライトプラン」を月額300円で提供開始します。

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    auのiPhoneおよびiPadでテザリングサービスを開始し、mineoショップの出店拡大、エンタメ系のオプションサービスの拡充も予定されています

100万契約でも、まだ赤字!

質疑応答には、荒木氏とケイ・オプティコム 経営本部の上田晃穂氏が対応しました。

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    記者団の質問に回答する、荒木誠氏(左)と上田晃穂氏(右)

今年(2018年)の4月に100万回線を突破したmineo。現在、契約数は106万回線まで伸びていますが、まだ黒字化していないそうです。これについて、荒木氏は「販促費、広告宣伝費、店舗展開の運営費にどの程度のコストをかけていくか、で決まります。ユーザーの皆様に良いサービスと感じていただけるように、これからも投資を続けつつ、収益も高めていきたい」と説明しました。

2020年度に200万回線まで到達させる、というのが当面の目標。そのころには黒字化できている見込みとのことでした。

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    2020年度に200万回線が目標。100万回線を突破しても黒字化できていないという厳しい現実があります

Sプランで利用できるネットワークはソフトバンク網だけで、ワイモバイルで利用しているネットワークは使えない、と上田氏。Sプランの利用料金が高い理由については「できれば同じ料金にしたかった。ソフトバンクでは接続する形態やオペレーションが異なり、SIMカードの種類も多いのが特徴です。バックヤードのコストなども勘案した結果、この料金になりました」(上田氏)と説明します。

Sプランの導入は、1年くらい前から検討していたとのこと。荒木氏は「現在契約している大手キャリアがどこで、何の端末を使っているかに関わらず、家族みんなでmineoに乗り換えられるメリットを提供できるのが大きい」とします。

いま、ユーザーから求められているニーズについては「昼間の通信速度を何とかしてほしい、という声を多くいただいています。mineoに残された、いちばん大きな課題」と上田氏。設備投資や通信の最適化などを図り、改善していくと約束しました。

  • 格安SIMサービスの「mineo」、ソフトバンク回線に対応

    ソフトバンク回線に対応し、キャンペーンも実施することで200万回線という目標を早期に実現したいところ