宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月24日、小惑星探査機「はやぶさ2」の管制室を報道向けに公開した。同探査機は現在、小惑星リュウグウへの接近運用を続けているところで、この日にはちょうど、8回目の軌道制御(TCM08)が実施された。TCM08後の相対速度は秒速8cm、小惑星までの距離は約38km。到着まで、残りのTCMはいよいよあと2回だ。
TCM08の噴射は9時35分頃より2回に分けて実施。1回目はZ軸方向、2回目はY軸方向の制御が行われた。TCMは通常、このようにXYZの方向ごとに行うとのことだが、結果を見てからさらに補正噴射を行う場合もあり、多ければ4~5回実施したこともあるそうだ。
噴射のためのコマンドは、すでに当日の朝に探査機へ送信済みのため、噴射のタイミングでは特に何もすることはないのだが、9時51分すぎに、探査機との相対速度の変化が、管制室のモニター上に現れた。地球と探査機は3億kmも離れているため、電波が届くまでに、これだけの時間がかかってしまうのだ。
地球と探査機の相対速度は、ドップラーシフトによって知ることができる。救急車のサイレンの音が、近づくときと遠ざかるときで変わるのと原理は同じで、TCM08を実施すると速度が変化するため、ドップラーシフトの大きさも変わる。ただし、ドップラーで分かるのはZ軸方向の速度だけで、2回目に行ったY軸方向の噴射では変化は無い。
その後、運用チームでTCM08の評価が行われ、10時頃、無事完了したことが確認できた。8回目ともなるともう慣れてしまったのか、淡々とした感じではあったが、管制室ではメンバーが拍手する様子が見られた。
なお、プレスに当初配布された資料には、TCM08後の速度は秒速1cm、小惑星までの距離は約27kmと記載されていたのだが、最新の解析により、小惑星までの距離は10kmほど遠いことが分かったため、相対速度を少し大きめにしたということだ。
往路の"ゴール"となるのは、リュウグウから距離20kmの地点(ホームポジション)。今後、26日には、小惑星までの距離が21kmに接近。ここでTCM09を行い、相対速度をほぼゼロ(秒速3mm)まで下げる。リュウグウの重力によって加速されるため、翌日には秒速2cm程度まで早くなっているが、そこでTCM10を実施して、相対速度をゼロにする予定だ。