宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月14日、6月27日前後に小惑星リュウグウに到着する予定で宇宙を航行している小惑星探査機「はやぶさ2」の現在の状況説明を行った。

リュウグウ到着まで1000kmを切ったはやぶさ2

6月14日時点ではやぶさ2とリュウグウの距離は約750km。リュウグウへの精密な接近のために行っている光学電波複合航法(光学航法)に用いている光学航法カメラ「ONC-T」(望遠)で撮影されたリュウグウの姿は、6月13日13時50分時点(日本時間。リュウグウとはやぶさ2との距離は約920km)で等級が約-6.6等、視野角は6.3度角×6.3度角で10ピクセル程度の大きさであり、「形は予想されたとおりだが、団子型というよりかは角ばっているようにも見え、詳細はもう少し近づかないと分からない」(「はやぶさ2」プロジェクトチームの吉川真ミッションマネージャ(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用光学研究系 准教授))という。

  • 産総研の神山氏、JAXAの久保田氏と吉川氏

    左から産業技術総合研究所 人工知能研究センターの神山徹 主任研究員、JAXA 宇宙科学研究所 研究総主幹の久保田孝氏(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 教授)、吉川真 ミッションマネージャ

現在、光学航法を用いて、リュウグウに近づきつつあるはやぶさ2だが、スラスターを用いてその軌道を細かく変更し、リュウグウへと近づくTCM(Trajectory Correction Maneuver)は到着までに全10回の実施を予定。すでに6月8日に第1回(TCM01)、6月11日に第2回(TCM02)が行なわれたほか、6月14日に第3回(TCM03)が行なわれ、これでリュウグウへの接近速度は約1.7m/sとなる。

この後のTCMの実施予定日は6月16日(TCM04)、6月18日(TCM05)、6月20日(TCM06)、6月22日(TCM07)、6月24日(TCM08)、6月26日(TCM09)、6月27日(到着マヌーバ。TCM10)となっている。

  • TCMの実施スケジュール予定
  • TCMによるリュウグウとはやぶさ2の相対速度の変化
  • TCMの実施スケジュール予定と、それに伴うリュウグウとはやぶさ2の相対速度の変化 (C)JAXA

到着予定日は27日前後

はやぶさ2のリュウグウ到着日は前回発表された6月27日前後から変更はない。では、実際の前後、どれくらいの差が生じる可能性があるのか。これについて吉川ミッションマネージャは、「基本的には27日に到着する見通し。前後となる可能性としては、前についてはなんらかのアクシデントなどが起こらなければほぼないと思っている。一方で、後ろにずれ込む、というのは、リュウグウ周辺の安全確認が終わらなかった場合など生じる可能性を考慮して語っているもの」と説明しており、2018年6月14日時点の基本線として27日に到着で、安全性などが考慮された場合、確認がとれるまで後ろにずれ込む、といった日程になる模様だ。

具体的な到着日程が見えてくるのはTCM08実施の6月24日ころ、とのことである。現在、プロジェクトチームは、リュウグウも衛星を持つ可能性が否定できないことから、その存在についての探索を継続して行なっている。6月7日の距離約2100kmの段階で、直径にして50cm以上の物体がリュウグウの周りを公転していないかの確認を行なったとのことであるが、「距離400kmの時点でリュウグウの周りを回っていられる下限となる直径10cmより大きな物体が存在しないかどうかが1つの目安」(産業技術総合研究所 人工知能研究センターの主任研究員で、はやぶさ2 ONCの開発運用チームメンバーの神山徹氏)とのことで、プロジェクトチームでは引き続き、衛星の探索を行い、リュウグウへの安全な到着を目指すとしている。

なお、リュウグウへの到着に向けて航行を続けるはやぶさ2は、日々、多くの画像の撮影を行なっており、JAXAでは、そうした画像について、随時、JAXAの運営するWebサイトなどを通じて公開していきたいとしている。