ソニーの社長兼CEOが変わったのは、今年(2018年)の4月。平井一夫氏から渡されたバトンを受けるかたちで、新たに社長兼CEOに就任した吉田憲一郎氏による、初めての中期経営計画方針を発表する記者説明会見が開かれた。
対象となる2018年度から2020年度までの3年間は、前任の平井氏による基本戦略を引き継ぐ「第三次中期経営計画」に沿って、経営基盤の安定化と成長領域の強化を合わせて図る。壇上に登った吉田氏から、経営計画の具体が紹介された。
吉田氏は、前任の平井氏がソニーのキーミッションに掲げてきた「感動」をつくる企業経営と、ものづくりの哲学を踏襲しながら、ユーザーに近いサービス(DTC:Direct to Consumer)と、クリエイターに近いコンテンツIP(知的財産)の強化を図る考えを述べた。
コンテンツIP戦略の柱は、感動を共有する人々による「Community of Interest」を「音楽・映像・アニメ・ゲーム」のセグメントごとにつくること。クリエイターとユーザーとの狭間にいるソニーが、より「人に近づく」経営をより積極的な姿勢で押し進めていきたいと、吉田氏は方向性を語った。
事業分野別に、取り組む目標も掲げられた。好調を堅持するゲーム&ネットワークサービス分野では、サブスクリプションサービス「PlayStation Network」の会員数拡大や、ユーザーの訪問・利用時間の拡大を狙う。ゲームコンテンツについては特にサードパーティーだけでなく、ファーストパーティー(自社開発)のIP創出とアドオンコンテンツに成長機会が残されているとした。
吉田氏は「ソニーは過去、インターネットが台頭してきた時代に適切な戦略を打たなかったことから深刻な経営危機を迎えたことがある。苦い経験を教訓としながら、長期的視点による経営プランを建てることが大事」と述べている。
音楽・映画事業については、特に「定額ストリーミングサービス」の成長を注視しながら、コンテンツ力の強化とアーティストの育成にもバイタリティを注ぐ。音楽分野ではEMI Music Publishingをグループに迎える戦略を発表。取り引きが完了すれば、ビートルズのヒット曲の著作権を保有するソニーATVミュージックパブリッシング、ソニー・ミュージックエンタテインメントと合わせて、およそ400万タイトルを超える楽曲の著作権を保有する世界最大の音楽出版会社が、ソニーグループ内に誕生することになる。
映画分野では、今後大きな成長が見込まれるインドを中心としたメディアネットワークを広げる。アニメについては、コンテンツから派生するモバイルゲームやキャラクターグッズなど、周辺ビジネスの強化にも取り組む。人気キャラクターの“スヌーピー”でおなじみのコミック、「ピーナッツ」に関わるIPビジネスの著作権を保有するPeanuts Holdings LLCの持ち株を、ソニー・ミュージックエンタテインメントが取得することも伝えられた。