今回発表された「第三次中期経営計画」における、いわゆる“吉田色”がどこにあるのかという記者からの質問に対して、吉田氏は「正直に言ってあまり出していない。『感動』という大きなミッションを引き継いで、これを突き詰めることが今期経営計画の狙い。感動をつくるクリエイターと、感動するユーザーの間にありながら、それぞれにより近づくことがソニーの使命」と答えた。

アグレッシブな印象の平井氏に対して、吉田氏の掲げる戦略や人柄はやや控えめに感じられるところもある。ただ壇上でのプレゼンテーションが「ソニーとしての社会価値」に及ぶと、吉田氏の表情がとても活き活きとしてきた。

  • ソニーの吉田新社長、中期経営計画を発表
  • ソニーの吉田新社長、中期経営計画を発表

    吉田氏が自身の戦略や考え方を発信する社内ブログ。ソニーとしての社会貢献について、吉田氏が壇上で持論を展開した

「私は社長に就任後、社内向けのブログを始めた。初回は『地球の中のソニー』をテーマに、社会価値を見据えて経営に取り組むことの重要性について持論を語ってみたところ、社内から多くの反響を得た。社会価値の貢献というテーマには多面性がある。

例えばセンシングの技術を活かして自動運転社会の確立に貢献することは、引いては人々の安全な暮らしのためになるだろう。コンテンツIPの強化戦略は、未来に輝くアーティストの発掘と育成、そして大きな意味では将来を担う人材の教育と深く結びついている。これからのテクノロジーの時代にはプログラミング教育に注力することが大事。

ソニーのKOOVやMESH、toioなどのプロダクトが果たす役割は大きいし、ソニー社内で創造性豊かなアイデアを育むSAPの活動も人材育成に関わる取り組み。ソニーの社員が社会的使命を自覚しながら、思い切り羽ばたける安定した職場をつくることも私が社長として創業者から引き継いで取り組むべき課題。ステークホルダーとのより深いエンゲージメントを築くことも含めて、“人に近づいて感動を生み出す”経営に力を注ぎたい」(吉田氏)

前のめりに語る吉田氏のコメントには、“吉田氏らしい誠実さ”が前面に表れていたいように思う。