仮想マシンバックアップのVeeam Softwareは5月14日から3日間、米国シカゴにおいて年次イベント「VeeamON 2018」を開催した。
15日の基調講演では、共同CEO兼プレジデントのPeter McKay氏が「ハイパー・アベイラビリティ・エンタープライズ」という新しいビジョンを打ち出した。これまで中小規模企業が顧客の中心だったが、大手を視野に入れたメッセージだ。
総受注額は36%増、顧客数は30万社に
VMwareのバックアップとして2006年に立ち上がったVeeamは、後発ながら脅威的とも言える成長を実現している。約2年前にVMwareから共同CEOに就任したMcKay氏は「就任以来、平均すると133社を毎日追加した」と述べる。
顧客数は30万社に到達し、非公開企業ではあるが、同氏によると総受注額は2107年には前年比36%増の8億2700万ドルに到達した。すでに、Fortune 500の75%が顧客というが最近顧客となった中古車販売チェーンのCarmaxもその1社だ。
同社は、データセンターの一新にあたりレガシーのインフラ、アプリ、バックアップソリューションをモダン化し、バックアップとデータ保護では従来はCommvault、Veritasなどを利用していたが、Veeamに乗り換えた。
「システムのモダン化でわれわれのソリューションが選ばれる。典型的なパターンだ。年間数億ドルをシステムのメンテナンスのためだけに費やしている企業も存在するが、これでは新しい世代を支える新しいインフラを構築できない。Veeamは大企業をレガシーインフラから解放するのを支援できる」と、同氏は話す。
だが、McKay氏が何よりも強調するのは、ネットプロモータースコア(NPS)だ。顧客がベンダーを他社に推奨するかを調べる顧客満足度指標であり、独立した機関が調査する。Veeamは最新のスコアで73を記録、これはAppleの72を上回る高い数字であり、「業界平均の3.5倍高い」と同氏は胸を張る。
インテリジェントなデータ管理への道
Veeamはこのイベントで「ハイパー・アベイラビリティ・エンタープライズ」を打ち出している。McKay氏は「バックアップはリカバリ、アベイラビリティ、そしてハイパーアベイラビリティと進化する」と述べており、背景にあるのはデータに関連した3つのトレンドだ。
1つ目は「重要性」。データを活用して、より良い意思決定をリアルタイムでできるかどうかが企業にとって重要になっている。同氏は「ビジネスの予測性、ユーザー体験の改善などを満たすために、データの重要性は高まっている」と、説く。
2つ目は「量」。データの量は2年で2倍のペースで増えており、今後は人間だけでなく機械がデータを生成するようになり、成長はさらに加速することが予測されている。
3つ目は「スプロール(拡大)」だ。データとアプリは、これまでのように制限されず、クラウド、SaaSアプリ、レガシーのアプリケーション、デスクトップ、モバイルと、あちこちに存在する。
この3つのトレンドが大規模なシフトを起こしており、McKay氏は「企業全体でアベイラビリティを実現することが重要な課題となっている」との認識を示す。
データをバックアップできるだけでなく、データに対する企業の高い期待を満たす――これがハイパー・アベイラビリティ・エンタープライズに込めたVeeamのメッセージだ。これを実現するために、機械学習やAIがもたらすインテリジェンスは不可欠となる。
「データがインテリジェンスを得て、自動的にニーズを予想できる。データはモバイル端末をはじめ、あらゆるところに広がっており、これらを利用して新しい洞察を提供しなければならない」(McKay氏)
インテリジェントなデータ管理は、次の5つのステップで進める。
- バックアップ
- アグリゲート(集約)
- 可視化
- オーケストレーション
- 自動化
基本のバックアップの次にマルチクラウドでのデータ保護を行い(2の集約)、可視化することでリアクティブからプロアクティブなデータ管理を行い(3の可視化)、さまざまなクラウド、プライベートクラウド、オンプレミスをオーケストレーションして最適な場所にデータを配置する(4のオーケストレーション)。最後にバックアップ取得やデータの移動、保護などを自律的に行う自動化を進める。
これを実現するのが「Hyper Availability Platform」だ。これについては、4月に世界に先駆けて日本で発表した記事を参照されたい。同氏は「2年かけて構築した。企業の業種、規模に関係なく、同じ方向性に向かっている」と述べる。
ハイパーアベイラビリティ戦略で10億ドル企業を目指す
ハイパー・アベイラビリティ戦略実現にあたって欠かせないのが、Veeamのパートナー戦略だ。同社はHewlett Packard Enterprise(HPE)、NetApp、Cisco、Microsoftなどと提携しているほか、チャネルパートナーは6万5000社に達している。Veeamをアズ・ア・サービスとして提供するVeeam Cloud & Service Provider(VCSP)は1万9000社だという。
2017年の総受注額が8億ドルに達した時点で、Veeamは2018年は年商10億ドルを目指している。「ソフトウェア分野で10億ドルに達した企業は34社しかいない」とMcKay氏、それ自体簡単なことではないが目標はその先にある。
McKay氏は「10億ドルはマイルストーンに過ぎない。われわれは長期的に持続するソフトウェア企業を目指す。IPOもしないし、売却するつもりもない」と述べており、顧客やパートナーに信頼されるパートナーとなりたい、とアピールしていた。