実はここに地域密着型をうたう理由がある。昭和通りの東側は、西側のような華々しい観光資源はない。むしろ、家屋が密集した下町風情の雰囲気が漂う街並みだ。

だが、この地域には職人や工房といった“もの作り”の気質が色濃く残っている。ノーガホテルでは、こうした工房で作られたハンガーや靴べらといったアメニティを用意する。さらに、ホテル内のショップでは近隣の工房で作られた製品を販売。ギャラリーも用意され、地域のアートやプロダクトを中心に出展する。つまり、もの作りの街として上野を捉え、そうした工房などと連携を深めるのがねらいなのだ。

  • 台東区の工房で作られた製品の一部。左:1931年創業の木本硝子の江戸切り子とグラス。右:江戸末期から続く技を継承した日伸貴金属の製品

ディープな上野を知るのに最適な土地柄

塚崎社長は「宿泊客の方にディープな上野を知っていただきたい」と話す。特に外国人にとっては珍しいプロダクツとなるだろう。以前、「爆買い」というのが話題になったが、これは家電製品を中心としたもの。今は落ち着いており、むしろ日本でしか購入できない工芸品などを手に取る外国人観光客がジワジワと増えている。

ただ、遅きに失した感もある。東京・京都・大阪は、初来日したインバウンドが立ち寄る都市だが、リピーターは地方都市に散らばり始めている。上野周辺の観光資源や浅草に近いという立地をいかに生かせるかが、外国人観光客を取り込むカギになりそうだ。ちなみに野村不動産ホテルズの担当者は「欧米の観光客に注目していただきたい」と話す。欧米の方は長期滞在する傾向が強いので、この層をターゲットにするのはありだろう。

最後に、ノーガホテルの概要に触れよう。客室は130室で、22~24平方メートルのダブルやツインが主力だという。また、価格は1泊2~3万円ほど。ビジネスホテルよりかは高額だが、シティホテルよりも安価という設定だ。なお、場所は明かさなかったが、これからもノーガホテルを増やしていくとのことだ。