2017年7月、京都に合理的なカプセルホテルが誕生した。「スマートポッド」と呼ばれる居住スペースを採用した「ザ・ミレニアルズ」というホテルだ。このザ・ミレニアルズの2号店が3月15日にいよいよ東京で開業する。場所は若者文化のパワーがみなぎる渋谷だ。

さて、スマートポッドと呼ばれる居住スペースのイメージがわからない方がほとんどだろう。どう言葉で伝えればわからないが、居住性の高いカプセルホテルのようなものと、表現すればよいのか……。ただ、カプセルホテルとは異なり圧迫感が少なく、立って着替えることもできる。カプセルのような密閉空間ではない居住性が提供されている。

  • 左:渋谷にオープンした2号店の入り口。右:カプセルよりも開放的なスマートポッド。アートが施されている

ただし、ビジネスホテルのような個室ではない。廊下と居住スペースがカーテンで仕切れるぐらいの空間だ。だが、それだけにビジネスホテルよりかはリーズナブルに利用できる。ここ数年、旺盛なインバウンド需要のためか、ビジネスホテルといえども宿泊料が上昇傾向にある。その意味で、こうした新スタイルホテルの価値は増すのではないか。

実は、京都に誕生したザ・ミレニアルズ1号店を取材したことがある。斬新な居住空間に驚きを覚えたが、今回2号店として登場した渋谷も基本的には同じコンセプトだ。だが、その役割が異なってくるのではないかと推察している。

なぜ渋谷が選ばれたのか

グローバルエージェンツの代表取締役 山崎剛氏

まず京都だが、同地は観光資源が豊富で、インバウンドの来訪が多い。つまり、外国人観光客の利用者が多くなるのは想像に難くない。事実、ザ・ミレニアルズを運営するグローバルエージェンツの代表取締役 山崎剛氏によると、7~8割が外国人観光客の利用だという。ビジネスホテルよりもリーズナブルな価格設定が、長期滞在を目的にする外国人観光客に支持されているのだろう。

  • 端末のアプリで照明調節やベッドのリクライニングができ、ベッドの下にトランクルームがあるのは京都1号店と同じ

一方、渋谷はどうだろうか。もちろん東京にも多くのインバウンドが来訪している。そうした外国人観光客の需要は高いだろうが、もうひとつの利用客層を想定できる。それは、ベンチャーやクリエイターといった層だ。

というのも、渋谷や五反田といった山手線駅周辺は、起業を志す、あるいは起業したばかりのベンチャーが集まりやすいところといわれている。ベンチャーはその規模によって「シーズ」→「アーリー」→「ミドル」→「レイター」と成長段階で区分される。とりわけシーズと呼ばれる段階は個人や数人であることが多い。そうした最小単位のベンチャーやフリーのクリエイターが渋谷には集まりやすく、そうした層がザ・ミレニアルズを利用するというストーリーが考えられるからだ。