「亡くなったおばあちゃんの写真が手元になかったので嬉しい」「子供たちの小さい時の写真はケータイばかりだったので」――。KDDIが「ワクワクを提案し続ける会社」を会社のミッションとして掲げる中で、2016年から進めている「おもいでケータイ再起動」というイベントがある。

これまで、名古屋と仙台、福岡のKDDI直営店で開催し、この5月にはグループ会社である沖縄セルラー電話の「au NAHA」で初めて開催した。このイベントは、auユーザーのみならず、NTTドコモ、ソフトバンクユーザーのケータイをもよみがえらせる、思い切った企画として、好評を得ている。

なぜ、KDDIはこのイベントを続けるのか。イベントの価値や、今後の展開について、KDDI コミュニケーション本部 宣伝部 ブランドプロモーショングループ グループリーダーの西原 由哲氏に話を聞いた。

  • KDDI コミュニケーション本部 宣伝部 ブランドプロモーショングループ グループリーダー 西原 由哲氏

他キャリア製品も"復活"

おもいでケータイ再起動はこれまで、小規模イベントを含めれば750名のケータイ(スマートフォン含む)を"再起動"してきた。古くは2000年頃の携帯から、今の主要携帯キャリア3社だけでなく、ツーカーなど、統廃合された携帯キャリアの端末を含めて持ち込まれている。

  • 盛況だったau NAHAでのおもいでケータイ再起動。沖縄セルラー電話のキャラクター「auシカ」も来場した

持ち込まれた多くのケースは、バッテリーの過放電や充電ケーブルを破棄してしまったことで充電できなくなったというパターンだ。中には、バッテリーが膨らんでしまって使い物にならなくなったり、あるいは一部他キャリア製品については起動するためにSIMが必要だったりと、再起動できないケースもある。

  • 一部回収したケータイは、その場で破断作業が行われる。回収した端末から、レアメタルなどを回収、スマホなどのパーツに再利用される。持ち込まれるケータイは、他キャリア製品も少なくない

ただ、KDDIは電池パックをチェック・充電する専用の機械を用意して、起動できる電圧を確保し、750名の笑顔を呼び起こしてきた。西原氏も「毎回、お客さまの反応が新鮮で、泣いている人や喜んでいる人、こちらとしても良かったなと思える」と話す。

  • バッテリーチェッカーで、最低限の充電を行う。携帯の端子が壊れてるなどのケースでもバッテリーに直接充電できるため、このイベントでしか復活できない携帯も少なくない

同社は、カスタマー・エクスペリエンス(CX)重視の姿勢を2016年から打ち出しているが、このイベントはまさに「お客さまが諦めていることを解決し、期待を超える体験価値」を生み出すものとして、「ワクワクを提案し続ける会社」を体現するものといえよう。

小さいようで大きい、お客さんの琴線に触れる仕掛けとして、再起動したケータイから写真をその場でプリントする企画を用意した。今回沖縄・那覇で参加したお客さんの一人は、「家ではプリンターを起動しないし、そもそもケータイが起動しないから諦めていた。こうやって写真をもらえて嬉しい」と話す。