α9は、登場直後の状態(初期のファームウエア)だと、連写中のズーミング(ズームレンズ使用時に連写しながら画角を変更するという撮り方)にコンティニュアスAFの動作が追従しなくなる、という大きな欠点を密かに抱えていた。しかも、本件はレンズによって挙動が大きく異なる(問題を感じさせないレンズもあった)という素人目には不可解な事象でもあった。明らかにNGだったのは、FE100-400mmF4.5-5.6 GM OSSとFE70-300mmF4.5-5.6 G OSS。この2本の使用時、連写中に画角変化を与えると瞬時にAFが被写体を見失い、ピントの追従が行われない状態に陥ってしまったのだ。正直、α9はこういう曖昧で中途半端なところもイヤだった。っていうか、ツッコミどころになった。「なんだ、まだダメじゃん」と。

  • FE100-400mmF4.5-5.6 GM OSS(SEL100400GM)

  • FE70-300mmF4.5-5.6 G OSS(SEL70300G)

どんなときにそういう使い方をするのかといえば、例えばこちらに近づいてくるクルマの画面内での大きさを見かけ上、同じサイズのまま撮り続けたいとき。被写体の接近に伴いズームを引きながら(画角を広げながら)連写を続けることが「連写中のズーミング」になる。写真の世界では、カメラの動体に対するAF追従能力が一定水準に達して以降、実用になった、どちらかといえば動画的な撮り方だといえる(レースの映像などを見ると多用されていることがわかる)。そしてそれは、コントラストAFや像面位相差AFが明らかに苦手としてきた使われ方でもある。

例えば、オリンパスのOM-D E-M1 Mark IIも、当初はそういう使い方には対応していなかった。でも、のちにファームアップで対処。その結果、ほぼ問題のない動作が得られるようになっている。でも、測距点自動選択時はまだダメ。つまり、測距点を1点に絞っているときのみ連写中のズーミングにコンティニュアスAFが追従するようになったというのが現状だ。ミラーレス機にとっては、やっぱり荷の重い撮り方(操作&動作)なのだろう。

というワケで、α9もファームアップで何とかしてくれるに違いないと勝手に思いながら待つこと数カ月。ソニーにも要望は伝えていた。でも、ちゃんと受け止めてくれているかどうかは分からなかった。なぜなら、ソニー側の基本姿勢は「α9は最初からそういう使い方にも対応しています」だったからだ。いや、できていないからお願いしているんですケド……。

“3度目の正直”で一部の問題が解消

α9のファームアップは、2017年10月19日リリースの「Ver.1.01」が最初だった。その内容は「温度上昇警告の表示仕様を見直しました」のみ。しかし、私はFE100-400mmF4.5-5.6 GM OSS使用時のコンティニュアスAFの挙動にちょっとした変化を感じていた。Ver.1.00では、連写中に画角変化を与え続けると即ピントを外し、そのままフリーズしたようになっていたAFが、つまずきながらも何とか動き続けるようになったと感じられたのだ。でも、これは過大な期待が幻を見せただけだったような気もする。それほど厳密な検証を行っているわけではないので言い切る自信もない。

2017年9月27日リリースのファームウエア「Ver.1.10」は、「SEL70200GM(FE 70-200mm F2.8 GM OSS)/SEL100400GM(FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS)使用時においてズーム操作中のコンティニュアスAF精度の向上」を謳っていた。しかし、FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSSに関しては問題の改善にはまだ至っていなかったと感じている。

続いてリリースのファームウエアは、ファームナンバーもグーンと進んで「Ver.2.00」に(2018年1月11日)。AF関連のアップデート内容で「動体に対するコンティニュアスAFの追従性向上」「ズーム操作中のコンティニュアスAFの精度向上」の2点が示されているということで、今度こそっ!!の期待が盛り上がるなか、あらためて機材を借用してみた(そう、私はα9を購入しているわけではないのだ)。すると……。

うっひょっほ~っ!! 治ってる治ってる治ってるぅぅ~♪ 100-400mmを装着して動体を連写中にズーミングし続けても、ピントがちゃんと追従するようになってるじゃ~ん!! すげぇなぁ。ファームアップでここまで変わるもんかねぇ??(←それを期待していたくせに)と、アホみたいに喜んでおりますが、そもそもは最初からこうでなくちゃダメだったってこと。これでやっと、この点に関しては「一眼レフ並み」だ。

  • Ver.2.00のファームウエアの導入で、望遠ズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」(実売価格は税別290,000円前後)を装着した際の問題が解消された

でも、FE70-300mm F4.5-5.6G OSSを装着しての「連写+ズーミング」だと、100-400mmよりもAFの追従性が明らかに悪いなんていうヘンなクセも残っている。実現までにかなり時間がかかったこと、レンズによって挙動が変わる点が相変わらず残っているところから推して、相当に複雑な制御を駆使して何とかカタチにしている“不具合解消”なんじゃないかと私は勝手に思っているのだけど、実際のところはどうなんでしょうねぇ?

ヘソ曲がりであり、しかも歳を喰うごとに頑固になりつつあることを自認するオヤジがα9に馴染むのには意外に時間がかかったというのが正直なところだ。もちろん、前述の“ヌケている”部分があったことも「はんぶん拒絶」の大きな理由ではあったのだけど、ともあれα9の「良さ」は、私自身にとっては使い続けるうちにジワジワと沁みてくるたぐいのものだったといえる。新しすぎるがゆえに、錆び付き始めている身には感覚と感情がなかなか追いつかなかったといったところなのだろう。

  • ズームを引きながら(画角を広げながら)近づいてくる電車を連写。ファームウエア「Ver.2.00」よりも前は、FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS装着時にこの撮り方はできなかった(ピントが追従しなかった)のだ。それにしても、こういう撮り方をしているときはブラックアウトフリーのありがたさが身に染みる。圧倒的に撮りやすい(FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS使用、ISO800、1/2000秒、F5.6)