ソニーのミラーレス一眼「α」シリーズの頂点に君臨するのが「α9」です。2017年5月の販売開始から間もなく1年を迎えようとしていますが、この機種を超える速写性能を持つミラーレス一眼はいまだに登場しておらず、写真ファンからの評価は高止まりしています。さまざまなミラーレス一眼を衝動買いしてきた落合カメラマンも、当然ながらα9に目を付けたのですが、α9の印象は当初あまりよくなかったそう。なぜだったのでしょうか?


そもそも、少しばかりマイナスイメージからのスタートだった。スゴイ機能を有してきたことに感嘆しつつも、当初は素直にそれを受け入れられない自分がいたのだ。

ソニー「α9」の話である。「こりゃスゲーな」「時代は変わった」と率直に思った一方でアレコレ文句をいっていた。

「撮っている感触が希薄だから、撮れたっ!決まった!!という手応えも乏しい」
「ブラックアウトフリーは新鮮だけれどマストではないよね」
「写真家ではなくカメラオペレーターのための道具だろ、これ」

自分がα9の立場だったら鼻で笑っちゃうレベルの言いがかり。まさしく、柔軟性を失いつつある頑固ジジイの面目躍如。しょーもない(自覚)。でも、マジでそう思った。ハタから見ればアラ探しに見えるかもしれないけれど、これが最初にα9を使ったときの率直な印象だったのだ。

  • ソニーのフルサイズミラーレス一眼「α9」。ボディ単体モデルの実売価格は税別500,000円前後。装着しているのは望遠ズームレンズ「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」。実売価格は税別150,000円前後

「一眼レフはもういらない」とは感じなかった

5年ほど前からミラーレス機の使用頻度が劇的に向上し続けてきた私には、もう一眼レフへのこだわりなんてものは残っていない。一眼レフに育ててもらったとの思いを強く持つ「一眼レフど真ん中世代」であるのは確かなのだけど、撮影に関してはすでに高倍率コンデジやマイクロフォーサーズ機を分け隔てなく“便利に”使っているのが現状なのだ。

もちろん、その中でフルサイズの一眼レフも捨て切れてはいない。暗所での動体撮影など、まだ一眼レフを必要とする場面はある。α9の登場後も変わらずに、ある。

そう、まさに「適材適所」の考えが必要とされている今なのである。そうせざるを得ないと言い換えてもいい。でもソニーは、α9のリリースに際し「一眼レフなんてクソ食らえですわ。振動もすごいし。α9があれば一眼レフはもういらないでしょ? 過去の遺物ですよ。これからはコレ!」という姿勢を丸出しにしていた(と私は感じた)からカチンときた。

いや、言っていることは間違っていなかったと思う。α9の登場をきっかけに「一眼レフ、もういらない」と判断した人が山ほどいたことも分かっているつもりだ。でも、自分が肌で感じている「一眼レフの必要性」とソニーの言い分には明らかな齟齬があった。「はい、そうですか」と簡単に言いなりにはなりたくないと思ってしまったのだ。

まぁ、このあたり、「心情」みたいなものがおおかたを支配する他人には理解しがたい個人的な感覚だといわれれば、まさしくその通りなのだけど……。