こうした、収入に対して過剰とも思える人員、人件費を割かねばならない実状への、ひとつの解答が「全車指定席化」だ。背景としては、インターネット予約や指定席券売機の普及により、窓口も人員削減が可能となったこともあるだろう。

JR東日本の新幹線列車では「はやぶさ」「かがやき」などが現在、全車指定席で運転されているが、過去に自由席があった在来線特急が全車指定席化されたのは、2014年に平日朝夕の高崎線特急「あかぎ」が「スワローあかぎ」となったのが始まりだ。

「ひたち」「ときわ」は、品川駅乗り入れを機に、全車指定席となった

続いて、2015年には、品川駅への乗り入れが始まった常磐線特急が「ひたち」「ときわ」と改称され、やはり全車指定席化されている。こちらは、朝夕の通勤客主体の特急ではなく、終日頻発している特急である。

これらの列車は、乗車日、乗車列車のみ指定される「座席未指定券」を購入すれば座席の指定を受けずに乗車できるが、あくまで空席利用。使っている席の指定席特急券を持った利用客が来れば、譲らねばならない。

指定席特急料金自体は他の列車より安く設定されているが、車内で特急券を購入すると、事前購入より割高な料金が適用される。例えば50kmまでの区間の場合、通常、首都圏で適用されるB特急料金は自由席510円、指定席1030円(通常期)だが、「スワローあかぎ」「ひたち」「ときわ」の指定席は750円、ただし車内料金は1010円となる。事前に特急券を購入しておけば、車内改札も省略される。つまり、割安に乗りたければ「特急券の事前購入」へと誘導されるようになっている。

房総特急も将来、全車指定席化?

今回の房総特急の指定席増強では、特に「スワローあかぎ」などのようなソフト面での施策は取られておらず、通常の特急料金のままだ。特急料金だけの「房総料金回数券(指定席用・自由席用)」が以前から発売されているため、今後はこれの販売強化が図られることと思われる。

  • 左:JR東日本在来線特急の全車指定席化の草分けとなった「スワローあかぎ」。右:両国~館山間に全車指定席で運転された「さざなみ91号」

そして、いずれは全車指定席化へと向かうのであろう。「しおさい」「さざなみ」「わかしお」といった房総特急と、すでに全車指定席化された各特急は、首都圏の通勤客、ビジネス客主体の特急という、列車としての性格に、かなり似た面があるからである。

今回の指定席増強は、将来への布石と思われる。すでに「館山若潮マラソン」のランナー輸送列車として運転された「さざなみ91号」などの臨時列車が、全車指定席で運転された実績もある。

ただ、40年以上、房総特急の利用客が使い慣れてきた自由席を廃止するには、かなりの経過措置が必要だろう。これから数年間、どのような施策が取られるのかを注視していきたい。