半導体調査企業の米IC Insightsが、3月下旬に発行した調査レポート「McClean Report2018年3月更新版」によると、2017年のIC市場におけるファブレスメーカーが占める割合は27%で、その市場規模は1014億ドルとなったという。ファブレス半導体業界全体のシェアは10年前(2007年)には18%であったことから、この10年で9ポイント上昇したこととなる。

2017年のファブレス半導体メーカーの、本社所在国別売り上げ割合を見ると、米国企業が53%と過半のシェアを占めたが、2010年の調査時は69%であり、当時に比べれば減少傾向となっている。ただし、これは米Broadcomがシンガポールに登記上の本社を置くAvago Technologiesに買収され、シンガポール籍の企業となったことが要因の1つとして挙げられる。現在、Broadcomは、米カリフォルニア州San Joseに実質的な本社を置き、シンガポールを登記上の本社としているが、4月上旬をめどにこれらを米国に統一する計画としており、この移転が完了すると、米国勢は再びシェアを上昇させることとなる。

  • 2017年のファブレス企業の本社所在国別シェア

    図1 2017年のファブレス企業売上高(合計1014億ドル)の本社所在国別内訳(%)。右下は2010年時点での本社所在国別内訳(%) (その他の国々17%のうち、シンガポールに登記上の本社を置くBroadcomが16%を占める。また、中国の11%のうち、HiSilicon(Huaweiの子会社)、ZTE、Datangの社内あるいはグループ向け売り上げを除外すると6%となる) (出所:IC Insights)

2位となる台湾の2017年市場シェアは16%で、2010年時の結果と比較してもほぼ同じ割合であった。MediaTek、Novatek、Realtekはそれぞれ2017年売上高が10億ドルを超えており、ファブレス企業ランキングのトップ20に入る規模を維持している。

3位となった中国は、近年、徐々に市場での存在感を増しつつある。その結果、市場シェアも2010年の時点で5%に過ぎなかったものの、2017年には11%へと増加しており、高い成長を続けていることが窺える。ファブレス半導体企業トップ50社中、中国のファブレス企業は、2009年の時点でゃHiSiliconのみであったが、 2017年には10社に増加している。中でも清華紫光集団(Unigroup)は中国最大のファブレス半導体企業であり、世界でも9位のファブレス企業として位置づけられるまでに成長している。またHiSiliconは90%以上の売り上げを親会社であるHuaweiに依存しており、これとZTE、Datang両社の社内消費分を除外すると、ファブレス市場における中国のシェアは約6%に低下するとのことで、中国のシステムメーカーの勢いが強いことが窺える。

  • ファブレスIC企業ランキング・トップ50社に含まれる中国のファブレス企業数

    図2 ファブレスIC企業ランキング・トップ50社に含まれる中国のファブレス企業数。2009年はHiSilicon 1社のみであったのが2017年には10社に増加している (出所:IC Insights)

そのほか、欧州勢は2010年のシェアは4%であったが、2017年には2%までシェアを落としている。これは、2015年に欧州2位のファブレス企業であった英CSRが米Qualcommに、欧州3位の独Lantiqが米Intelにそれぞれ買収されたためである。その結果、ファブレス売上高ランキングトップ50社に残っているのは、英Dialog Semiconductor(2017年の売上高14億ドル)とノルウェーのNordic Semiconductor(2017年の売上高2億3600億ドル)の2社だけとなっている。また、日本や韓国では、ファブレスのビジネスモデルそのものがほとんど普及していない。日本最大のファブレス企業はMegachipsで、2017年の売上高は、前年比4割増の6億4000万ドルであったほか、韓国のトップファブレス企業はSilicon Worksで、こちらの2017年売上高は、前年比15%増の6億500万ドルであったという。ファブレスランキングのトップ50に入っている日本系ならびに韓国系企業はこの2社だけという状況である。

結果としては、ファブレス市場で中国がシェアを伸ばした分、欧州、日本、韓国がシェアを落としたということである。日本は、2010年にかろうじて1%あったシェアが2017年には、1%未満となってしまい、グローバルで好調な半導体市場とは裏腹にIDMのビジネスモデルが凋落する一方で、ファブレス企業が育っていない気がかりな状況となっている。