さて、お酒の楽しみ方のひとつに、好みの“味”を見つける、というのがある。たとえば日本酒なら1,500以上もの醸造所があり、居酒屋でも数種類のメニュー、店によっては数十の銘柄がストックされている。
ワインはフランス、イタリア、チリといったワイン原産国からの輸入はもちろん、近年では日本固有のブドウ種「甲州」や「マスカット・べーリーA」を使った、純国産ワインに注目が集まり始めている。
一方ビールは、前出のとおり、強いブランドが幅を利かせ、しかも「どれでもいい」という風潮が消費者にはある。お酒の楽しみ方のひとつである“選ぶ”という考え方からもっとも遠い存在がビールだったのだ。クラフトビールは、そうしたビールのマンネリ化から脱却するための起爆剤になりそうだ。
クラフトビールが注目され始めた背景には、食の多様化がある。ずいぶんと昔からだが、フランスやイタリア料理、中華料理、和食といったように日本は多国籍な料理が楽しめる国柄だ。当然、こうした食事を楽しむ際に、お酒を同時に注文する人は多いだろう。自分が好きな料理に、お気に入りの日本酒やワインをオーダーするというシーンは珍しくない。
「とりあえず生」という風潮からの脱却
ところが、ビールだと「とりあえず生」というのが前提になってしまっている。そこで多様な味わいが用意されているクラフトビールに大手メーカーが本腰を入れ始めたのだ。
ビール大手のキリンがクラフトビールにかける鼻息は荒い。数々のイベントを仕掛け、クラフトビールの認知度を上げようと、努力を惜しまない。先日も横浜・みなとみらいでメディア向けイベントを開催し、チーズやパスタ、ローストビーフといった料理とクラフトビールのペアリングを楽しめるセミナーを開催した。チーズの種類ごとに合わせるクラフトビールを提案するなど、これまでの「とりあえず生」という世界観とは異なるものだった。