新型aiboは、ソニーのAI・ロボティクスを象徴するフラグシップモデルと言えるだろう。製品の特徴については、平井社長に代わって登壇した川西泉・AIロボティクスビジネスグループ長が説明を行った。

川西泉・AIロボティクスビジネスグループ長

まずメカトロニクス関係では、しなやかでリアルな動きを実現するために、超小型のアクチュエータを新開発した。自由度は合計22軸。先代のAIBOは20軸だったが、腰と首ロール軸(いわゆる"萌え軸")が追加され、腰を振るような動きや、首をかしげる仕草が可能になった。

22軸のアクチュエータを搭載

センシング技術も強化された。腰の上には、SLAM用の魚眼カメラを搭載。画像からマップの作成を行い、行動範囲を広げていく。鼻先には画像認識用のカメラもあり、物体や人間を認識。オーナーを見分けることもできる。

aiboに搭載されている各種センサー

鼻先カメラの映像。人間を認識している

腰の上にあるのがSLAM用の魚眼カメラ

鼻にカメラ、口にToFセンサーを内蔵

胸の中央に人感センサー、その両脇はPSDセンサー

顔の側面にはマイクを内蔵する

そして先代AIBOから最も大きく進化したと言えるのはAIだろう。aiboのAIは、3つのシステムで構成。本体側とクラウド側にそれぞれAIがあって、この2つが同期しつつ、aiboの「個性」が成長する。そして、同意を得たオーナーのクラウドAIから、データを収集・蓄積。これを集合知として活用することで、aiboがさらに賢く進化する。

3つのAIでaiboはさらに賢く

先代AIBOも感情モデルを持ち、オーナーとのコミュニケーションにより個性が形成されていたが、これはあくまで事前に組み込まれていた仕組み。その後、大きく進展したAI技術を搭載できた新型aiboは、実際に進化していくという点が大きく異なると言えるだろう。

なお、このようにネットワークの使用が前提となるため、aiboにはLTEを搭載。購入時にSIMもセットされており、電源を入れればすぐに利用できる。これは、高齢者層を意識した配慮とのことだ。Wi-Fi(IEEE 802.11b/g/n)も搭載するので、無線LAN環境があり、自分で設定できる人はこちらも利用できる。

aiboをより楽しむために、専用アプリケーション「My aibo」も提供する。本体設定などが行えるほか、撮影した写真を見たり、アプリ上の仮想aiboと遊ぶ機能などがある。ストアで購入した新しい振る舞いを追加することも可能だ。

「My aibo」の画面。これはPC用のものだ

スマートフォン用のアプリも用意される

発売日は2018年1月11日だが、発売後もアップデートを続けていく計画。今後、注目なのは、IoT連携が考えられていることだ。aiboは「犬型を明確に想定して作った」(川西氏)ため、会話することはないが、音声認識機能は持っているので、aiboに話しかけてIoT機器を操作するようなことが可能になるかもしれない。

AmazonのAWSを導入する予定とのこと

さらに、SDKも用意する。aiboはLinux+ROSで制御しており、外部ユーザーが開発した独自アプリが動けるようにすることを検討中とのこと。以前、AIBOは自律ロボットサッカー競技「ロボカップ」のプラットフォームとして採用されていた実績がある。今回のaiboも、研究用やB2Bのプラットフォームとして活用できそうだ。

aiboのシステム構成。4コアCPUを搭載する

アーキテクチャ。このサイクルで自律動作する

率直に言って、今回のaiboに意外感はない。画像認識、SLAM、AI、クラウド、ディープラーニング、オープンアーキテクチャ、IoTなど、キーワードを並べてみれば現在のトレンド通りで、「最新の技術でAIBOを作ったらこうなるだろう」という、予測通りとも言える。まさに「AIBOの正常進化」である。

しかし、家庭向けロボットとして重要なのは、いかに長く使ってもらえるかだ。長期的な使用感は短時間のデモを見ただけでは良く分からないので評価は避けるが、全体的な完成度の高さは感じられ、期待できるのではないかと思う。川西氏は今回のaiboについて「挑戦のスタートにすぎない」と述べており、今後の展開にも注目だ。

動いているaiboをひたすら観察してみた。愛らしい仕草は非常に完成度が高い