富士通取締役 執行役員専務/CFOの塚野英博氏。2016年度第3四半期(3Q期)の決算発表にて

交渉が長期化した理由について、富士通の塚野副社長は、「世界各地で販売していることで、中身を細かく見たことが影響した。範囲が広いこと、掘り下げ方が深いということで、時間がかかってしまった」とし、「さまざまな交渉のなかで、ここまでの細かい数字を見る必要があるのかというほど、かなり仔細に確認をしている。決めごとであれば、どこかでどちらかが譲ってしまえばいいが、お互いにある規模の会社であるということもあり、細かいディテールにもこだわった」とした。

なお、携帯電話事業の提携交渉などに関しては、「現在、粛々と進めており、まだ具体的なスケジュールなどは話せる段階にはない」と述べている。

富士通が、PC事業の売却を決めた背景には、市場変化の影響を受けやすく、赤字化していたPC事業を切り離すことで、営業利益率を高め、安定化させる狙いがあった。

富士通は、2016年度実績で2.9%だった営業利益率を、2017年度には4.5%に引き上げる考えを示しており、これを「5%ゾーンのミニマムライン」とする。さらに、2018年度には、過去最高となる営業利益率6%ゾーンを目標に掲げ、将来的には10%以上を目指す方針を掲げている。

富士通の田中社長は、「グローバル企業と互して戦うには、営業利益率10%の水準が必要である」と断言し、この数値の達成に意欲をみせている。

つまり、この目標を達成するには、営業利益率が低いPC事業の分離は必須だといえた。

2017年、富士通のPC事業は黒字に転換

当初は、東芝のPC事業およびソニーから独立したVAIOとPC事業を統合する検討を進めた時期もあったが、結果として、VAIOは独立して事業を展開。東芝は、PC事業が自立再生できるとして、統合を見送った経緯がある。PC事業の分離によって、売上高4兆円を割り込む可能性も指摘されているが、富士通はあくまでも切り離しを前提とする姿勢は崩さなかった。

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だが、富士通のPC事業は、この1年間で黒字に転換。2017年度上期(2017年4月~9月)業績によると、PCおよび携帯電話事業で構成されるユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比5.2%増の3,206億円、営業利益は17.2%減の107億円となった。

PC事業については、国内では個人向けハイスペックPCの販売が好調であったこと、海外では為替影響により増収となったことで、全体でも増収。円安によるドル建て購入部材のコストアップ、キーコンポーネントの市況価格の上昇などもあったが、それをカバーして黒字を維持している。

レノボグループと交渉を開始した時点に比べて、「お荷物」という状況ではなくなっているのが現状だ。