最初からアメリカや欧州を狙っていたと話す高場氏だが、Brain Warsではアメリカの割合が25.2%、Brain Dotsでもフランスが7.6%など"有言実行"で市場を開拓してきた。一方で、すべてが順風満帆とは言えないと高場氏。その一例がアプリ内課金だ。日本でスマホゲームのマネタイズの主流といえば"ガチャ"だろう。

一方で、グローバルではガチャは主流とは呼べず、基本的にはアイテム課金、ゲーム内通貨課金といったものになる。高場氏はこの点で「アプリ内課金はハードルが非常に高い。特に私たちの"カジュアルゲーム"というジャンルは受け入れられない。そのため、広告による収益が8割を占めている」と語る。

アプリ内広告でも、収益性を高めるために、全画面広告や動画広告など、さまざまなフォーマットを活用しているという。「ただ、やはり広告よりもユーザーに課金してもらえるような体験価値を提供したい。そこから脱却するためにも、次回作では(アプリ内課金に)力を入れている」(高場氏)。

ただし、ゲームを提供する元来の目的は「世界中、誰もが使えるアプリを」というもの。例えばBrain Dotsではインドのアプリユーザーが7.7%を占め、韓国、米国に次ぐ3番目のユーザー数だという。一方で広告単価は低く、「ただユーザーがいるだけです(苦笑)」(高場氏)。それでも「インドの人がこのゲームを好きというだけで良い。経済合理性は二の次」と意に介さない。

Brain WarsとBrain Dotsはともに海外がメイン市場だ

「うちの国の会社」と思われるために

世界中に自分たちのゲームを楽しんでもらうため、日本語と英語だけでなく、Brain Warsでは7カ国、Brain Dotsでは16カ国、次回作では18カ国語の言語に翻訳してゲームを提供している。もちろん、それ以上に言語は存在するが、20名規模の会社でここまでやるケースは珍しいように思える。

「機能や見た目こそ共通してますが、言語は可能な限り対応したい。私たちは日本の会社ですが、言ってしまえば『このアプリはうちの国の会社が出しているアプリなんだ』と思われる存在になりたい。そうしたポイントにフォーカスするのが最大のマーケティングであり、だからこそ私たちはシンプルで好かれるゲームアプリの開発にフォーカスできるんです」(高場氏)

高場氏が目指す会社の将来像の一つはスーパーセルだと話す。スーパーセルはフィンランドのゲーム会社で、「クラッシュ・オブ・クラン」などで著名だ。2013年にソフトバンクグループの一員になるなど(現在は中国・テンセント傘下)、グローバルで高い評価を受けている。

スーパーセルは売上の半分を米国で上げており、2位の市場が日本というトランスリミットと同様の収益構造。何より、従業員数が200名程度ながら売上高は23億1500万ドル(2016年度、日本円で約2616億円)も稼ぎ出す優良企業なのだ。「一人あたりで10億円あまりの売上は一つの目標。ジャンルは違えど、スマホアプリという面で可能性は十分あると思っています」(高場氏)。

高場氏は自分たちの目標を語りつつ、日本から世界を狙う意義についてこう語った。

「日本は世界に類を見ないコンテンツ大国なのに、どうしても国内で小さくまとまってしまっていると思います。日本から海外を見通すことは必要だし、そもそもスマートフォン時代に『日本から海外だ』という考え方がおかしい。国境は関係ありませんから。世界を相手にするという考え方は当たり前にすべきですし、日本は遅れていると言われがちですが、台湾や韓国といった国が先行しているかというとそうでもないと思う。Facebookなどのプラットフォームの戦い方は、何も日本が出来ないわけじゃない。キャラクターIPのパワーだけでなく、大切にしたい価値を世界に広めたいと思って、頑張っていきたいですね」(高場氏)