J.フロント リテイリング 取締役兼代表執行役員 山本良一氏

事実、J.フロント リテイリング 取締役兼代表執行役員 山本良一氏は、「百貨店である松坂屋と、ファッションビルであるPARCOそれぞれの強みを生かす」と意気込む。それだけではなく、周辺の商店街や施設と協力していくことで、このタワーを起爆剤とし、上野御徒町地域を活性化する「アーバンドミナント戦略」を展開していくとした。

一方、大丸松坂屋 代表取締役 好本達也氏は、「大丸松坂屋とパルコが連携するのは初。両店の得意とする分野でそれぞれを補完できるのではないか。周辺地域とも連携し、新しい下町『シタマチ.フロント』を創り出したい」と話す。また、周辺地域との連携について、具体例のひとつとして、上野の案内所をタワーの地下1階に開設することを明かした。周辺の名所や名店、名品などをガイドする役目を担うという。

パルコ 代表執行役社長 牧山浩三氏も、松坂屋上野店と新南館、そしてPARCOの連携を強調。「松坂屋上野店と新南館・PARCOが入居する上野フロンティアタワーは、地下と空中ブリッジで行き来できる。回遊性を生み出せるので相乗効果が期待できる」とした。さらに「今回、編集した68店舗のうち、この地区に初進出したのは8割。新たな層の集客につなげたい」(牧山氏)とも話す。

大丸松坂屋 代表取締役 好本達也氏(左)、パルコ 代表執行役社長 牧山浩三氏(右)

そして、東京23区で44年ぶりに出店するこの店舗の名称を「PARCO_ya」とした。松坂屋とPARCO_yaという屋号が並ぶのはなんとなくユニークだ。

PARCOといえば、若者のファッションを牽引した渋谷PARCOが建て替え中。2019年に完成予定だが、開業すれば上野と渋谷という、山手線をほぼ北東南西に貫く線上に拠点をかまえることになる。山手線を利用してショッピングやレジャーを楽しみにきた客を、地理的にも取り込みやすくなるのではないか。

映画館やオフィスフロアを備えた複合ビル

そのほかの仕掛けとしては、TOHOシネマズが7~10階に入居する。上野観光連盟 会長 二木忠男氏によれば、「以前は映画館が数館あったが、近年はスクリーンの空白地帯になっていた。地元にとっては待望の映画館」だという。全8スクリーン1,400席の規模となり、国内外の作品はもちろんのこと、秋葉原からの徒歩圏内ということを生かし、アニメファンに支持される作品も上映されるという。

また、12~22階はオフィスゾーンとなる。11,700平方メートルの事務所面積は、ほぼ満室。1,000人以上のオフィスワーカーの取り込みは、松坂屋上野店やPARCO_yaにランチ需要を生み出すだろう。退勤時に、ファッションアイテムや雑貨を購入して帰路につくというニーズにも応えそうだ。

左:TOHOシネマズのイメージ(提供:上野フロンティアタワー)。右:22階カンファレンスルームからの眺め。上野恩賜公園はもちろん、天気次第で富士山もみえる

六本木や渋谷などに比べれば、いまいちパッとしなかった上野御徒町。上野フロンティアタワーの登場により、どう変貌していくか。興味が尽きないところだ。