三井倉庫箱崎ビル(IBM箱崎ビル)

渋滞の“名所”として悪名高い、首都高速の箱崎JCT(ジャンクション)。そんな箱崎JCTからみえるひときわ大きな建物が三井倉庫箱崎ビル、いやIBM箱崎ビルと呼んだほうが、みなさん、ピンとくるのではないか。

この箱崎のランドマークといえるビルには、日本初となる試みが採り入れられている。それは、河川の水を利用した熱供給プラント。ビルの真横を流れる隅田川から地下に設置された熱供給プラントに取水し、冷暖房に生かすのが目的だ。

どういうことかというと、外気温に比べ、水温が夏は低く冬は高い隅田川の水をヒートポンプの熱源に利用することで省エネルギーを図っている。

ビル目の前の隅田川から取水。隅田川のスーパー堤防の上に3本の取水管が設置されているが、植生によりほとんどわからない

30年近く経つ三井倉庫箱崎ビル

三井倉庫箱崎ビルは1989年に建設され、隅田川の水を利用するこの熱供給プラントもその際に導入された。つまり、すでに30年近く経ち、そのことを考えると取り立てて注目すべきではないのではと思える。

ただ、再生可能エネルギー、しかも“未利用エネルギー”を活用するのにビルの地下に巨大なプラントを導入するのは、当時のことを考えれば相当な勇気が必要だったにちがいない。

ちなみに未利用エネルギーとは、河川水や地下水などの温度差エネルギーを利用するものや、工場といった施設からの排熱など、今まで使ってこなかったエネルギーの総称。たとえば川崎火力発電所では、ガスタービンで発電するが、その際に生じた排熱を近隣のコンビナートに提供する試みが知られている。

ビル地下に導入されているプラント。“エグイ”曲がり方をしたパイプが壮観だ