「IT企業各社がAmazon Echo+Alexa対抗デバイスの準備を進めている」という噂は、2016年前半にはすでに存在していたと認識している。当時名前が挙がっていたのはGoogleとAppleで、前者は2016年5月に開催された開発者会議「Google I/O」において、実際にGoogle Assistantに対応したスマートスピーカーが「Google Home」の名称で発表された。

今年のGoogle I/Oで日本市場への投入が明言されたGoogle Home

同時期にAppleも対抗製品を開発しているという報道が行われたものの、結局同年6月に開催された開発者会議「WWDC16」でこれが発表されることはなかった。最終的にAppleは翌年6月のWWDC17においてSiri対応スマートスピーカーの「HomePod」という製品を発表している。

AppleのHome Pod

米Microsoftは2016年末に中国の深センで開催されたWinHECにおいて、同社のAIアシスタント「Cortana」を搭載したスマートスピーカーを開発するためのガイドラインを発表した。OSにはWindows 10 IoTを利用することで通常のPC向けWindowsと比較しても軽いフットプリントで動作し、さらにディスプレイの有無によって2種類の要求スペックが定義されている。

同時期に、スピーカー製品で知られるメーカーのHarman Kardon (現在はSamsung Electronics傘下)との提携でCortana対応スマートスピーカーを間もなく提供開始するとティザー広告を展開し、これは後の2017年5月に「Invoke」の名称で正式に発表が行われている。

Harman KardonのInvoke

米系以外のメーカーとしては、中国のオンライン通販大手Alibabaが2017年7月に「Tmall Genie」という製品を発表して話題となった。「AliGenie」というAlibaba独自のAIアシスタントを採用しており、Alexa+Echoで実現されるSkillセットの多くが標準で利用可能になっているという。このほか、SamsungがやはりEcho対抗のスマートスピーカーを準備中という報道が出ている。Samsungはスマートフォン「Galaxy S8」発表に合わせてAIアシスタント「Bixby」の投入を発表しており、この開発中のスマートスピーカーはBixby対応になるという。

Tmall Genie

原稿執筆時点でBixbyの英語対応が遅れていることが伝えられているが、米国での競合らがすでに製品提供が行われている既存のAIアシスタントを自社のスマートスピーカー製品に搭載して市場投入している以上、SamsungもまたBixbyをセールスポイントとして売り込むために開発を急ピッチで進めている段階にある。

日本国内ではコミュニケーションサービスを提供するLINEが、AIアシスタント「Clova」を搭載したスマートスピーカー「WAVE」を発表し、一部機能が省略された廉価版デバイスを今夏に先行投入する計画だ。無骨なデザインのスピーカーだけでなく、キャラクターを模したユニークなデザインのスピーカー製品「CHAMP」も提供を予定している。

キャラクター商品として投入されるLINEの「CHAMP」。ほかに他社製品同様のシンプルなスマートスピーカー「WAVE」も投入する

現時点で競合はすべて米国や中国など自社の本拠地のみをターゲットに製品を投入しており、まだ日本への市場展開を行っていない。Amazon Echoは2017年内の国内投入が噂されており、GoogleはGoogle Homeの国内販売を明言しているが、LINEは日本を地場とする強みを活かしてClove+WAVEを先行投入する計画だ。

これらハードウェア製品に関して、Appleが事実上自社製品のみで閉じたエコシステムを形成しているのを除けば、基本的にはAIアシスタントの仕様を公開して外部のメーカーに搭載製品を開発してもらうケースが多い。Amazonが典型的だが、すでにLGをはじめとするメーカーからAlexa搭載デバイスが市場投入されている。

Googleも「Google Assistant built-in」の名称でサードパーティでの採用を推奨している。もともとソフトウェアのOEM供給を主眼とするMicrosoftでは、自社がスマートスピーカー製品を出すことはなく、あくまで基本仕様を定めて前述Invokeのようなサードパーティ製品の開発を促している。Amazonは「Development Kits for AVS (Alexa Voice Service)」で音声認識ハードウェア開発に必要なキットも用意しており、可能な限りエコシステムを拡大していこうという意図がうかがえる。