960fpsのハイスピード撮影が可能に

メモリ積層することで、センサーサイズに対して最大のメモリ容量を搭載したことで実現できた機能がスーパースローモーション撮影だ。

これは、720p解像度で960fpsのハイスピード撮影を行い、スローモーション再生ができる、という機能。記録時間は0.18秒で、それを30fpsで再生することで約6秒間のスーパースローモーション再生ができる。

今回の解像度と記録時間は、メモリ容量で決定されている。フルHDだとさらに記録時間が短くなり、6秒程度の再生ができる720pが最適と判断した。設計の段階から、チップサイズでメモリ容量が想定できたため、最大限のメモリサイズを確保し、できるだけ長い録画時間を選んだという。

録画時間はメモリ容量の制限を受けるとは言え、安達氏は「結果的にいいあんばいに仕様を決められた」と話す。解像度、時間ともにハードウェアの制限で決まったとは言え、ユーザーにとっては使いやすく、新しい経験を提供できるちょうどいいサイズになったとの結論だ。RX100などではメモリ容量が大きいため、さらに高解像度で長秒の録画もできるが、開発陣は現時点でスマートフォン向けではこれが最適とみている。

シャッター前も押さえる「ベストショット撮影」

メモリ積層型CMOSセンサーによって実現したもう1つの機能が「PREDICTIVE CAPTURE」だ。従来から同社のカメラが備えている動き検出機能を応用し、動体を検出すると自動的に記録を開始し、シャッターボタンを押した瞬間とその前の写真を保存してベストショット撮影を補助する機能だ。

人や車など、被写体の動く速度によって撮影間隔を自動的に調節して記録する。これにはバッファリングを含め高速処理が必要となり、その中でメモリ積層型CMOSセンサーが威力を発揮している。

この2つの機能は、ユーザーに対してカメラの新たな使い方、体験を提案するものとして搭載される。一部の機能はソニーやカシオなどのカメラでも搭載されているが、これをスマートフォンで実現し、ユーザーに提案している点が新しい。

周辺解像度を高画質化

今回のMotion Eyeカメラシステムの真価はこれだけではない。画質面でも進化を遂げているという。Gレンズも刷新されており、新しい19MPのCMOSセンサーに最適化させた。それだけでなく、周辺解像度を改善しているという。今回のレンズは35mm判換算で25mm相当という広角レンズを搭載する。一般的にレンズは広角になるほど周辺画質が低下する。

レンズ画質の改善の様子。中央の東京タワーは細部まで鮮明で、周辺のビルのヘリポートもしっかりと見えている

この広角レンズ特有の画質低下を抑えるために、レンズ交換式カメラ向けのレンズでは、材質やレンズ形状、コーティングなど、さまざまな工夫を凝らしており、高級レンズであるほど、画質低下が抑えられている。ところが、スマートフォン用カメラではこうした工夫が難しいし、コストもそれほどかけられない。

そのため、Xperiaシリーズは他社に比べて広角レンズを搭載していたものの、周辺の像の流れなどの画質低下を抑え切れていなかった。端的に言うと、レンズスペックが追いついていなかったのだ。

新レンズを搭載したMotion Eyeでは、レンズ形状を工夫するなどして、この周辺画質を改善したという。実際の作例を見ると、確かに周辺もよく解像しており、解像感が高まっている。