今年1月の社内向けメッセージのなかで、戴社長は、「シャープの競争力の源泉は独自の技術力にあり、これにさらに磨きをかけていくことが、長期的な成長を実現する上で、極めて重要」とし、具体的には、IoT関連技術、有機EL、次世代ディスプレイ、8K エコシステム関連技術を、「将来のシャープの核となる技術」と位置づけ、ここに積極投資をしていく姿勢を示した。
また、社長ファンドの創設により、重要技術開発の促進や、技術人材への投資を拡大することを示し、「将来、『金が成る』と社長が判断したものに投資をする仕組みであり、社長権限のなかで行うことになる」と、野村副社長は説明。「これまで使えなかったお金が使えるようになった。技術への積極投資を行い、拡大路線に踏み出したい」と続けた。
さらに、4月からスタートする2017年度の新たな事業推進体制では、現在、20のビジネスユニット(BU)を、約50のサブビジネスユニット(Sub-BU)に細分化。Sub-BU単位で事業拡大を加速することを目指す体制とすることも明らかにしている。
「Sub-BUのリーダーには、強いリーダーシップを発揮し、事業拡大を成し遂げ、BUへの昇格を目指してもらいたい」(戴社長)とする。
戴社長は矢継ぎ早の一手を打ち、技術の強化や、事業責任の明確化といった組織体制へと移行。今後、これらの取り組みは、さらに加速することになりそうだ。
シャープの文化を変える意識改革の舵取り重要
2016年度第3四半期の業績は、シャープの再建は着実に進んでいることを印象づけた内容になったのは確かだ。野村副社長も、「これまでは、削減などの構造改革で事業を見直してきたが、今後構造改革から競争力強化へとシフトすることになる」と拡大戦略に意欲をみせる。
だが、通期の最終黒字化は2017年度以降の課題であり、まだまだ経営体質の弱さもある。そして、戴社長体制での具体的な中期経営計画は、現時点でもまだ発表されていない段階であり、これは、2017年4月まで待たなくてはならない。それがどんな内容になるのかも、これからの注目点だ。
一方で、社員の意識改革を最優先する戴社長だが、これまでの104年の歴史が培ってきた文化を変えることは一筋縄ではいかないだろう。アクセルを踏む体制になったと認識したシャープ経営陣が、急アクセルを踏むようだと、社員は疲弊しかねない。そのあたりのさじ加減が気になるところだ。