今回の業績発表にあわせて、2016年度通期見通しを上方修正。売上高は11月1日公表値に対して、500億円増の2兆500億円、営業損益は116億円増の373億円の黒字。経常損益、当期純損益ともに赤字幅が縮小し、経常損益は161億円増の2億円の赤字、当期純損益は46億円増の372億円の赤字とした。残念ながら通期黒字化は達成できないようだが、公言した「下期黒字化」の目標達成に向けた歩みが、鴻海傘下で、着実に進展していることを示したといえる。
ディスプレイデバイス事業が黒字に
第3四半期の業績を振り返ると、米州における液晶テレビ事業のブランドライセンス化や、大手スマートフォン顧客向けの液晶パネル、カメラモジュールの需要減少などによって売上高は減収となったものの、構造改革の断行やコストダウンの取り組み成果、モデルミックスの改善効果などがあり、これらが営業損益の大幅な改善に寄与している。
また、物流の改善などを含めた鴻海グループとのシナジー効果が、当初予定の99億円に対して、「計画を若干上回るスピードで進んでいる」という効果も見逃せない。
とくに、評価されるのが、ディスプレイデバイス事業における黒字化だ。
第3四半期では、売上高が前年同期比23.3%減の2454億円となったが、営業損益は前年同期の110億円の赤字から、110億円の黒字に転換。「液晶テレビと大型液晶、中小型液晶のすべてで黒字を確保できた」とした。
売上高の約4割を占め、「液晶一本足打法」といわれるシャープの経営再建において、ディスプレイデバイス事業の回復は、「一丁目一番地」として取り組まなくてはならないものだ。今回の第3四半期決算でのディスプレイデバイス事業の黒字転換は、3カ月間の業績結果とはいえ、再建に向けた重要なマイルストーンを達成したといってもいいだろう。
鴻海流の経営手法で各事業が黒字体質に
野村副社長は、「各事業が、黒字体質になってきた」と前置きしながら、「戴社長の体制に移行してから、経営のスピードが速くなっている。これが業績の改善につながっている。そして、グローバルでの戦い方が社員の間に浸透してきた」などと語る。
戴社長は、社長就任直後に、「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」、「コスト意識を大幅に高める」、「信賞必罰の人事を徹底する」という3つの方針を掲げ、いわば鴻海流の経営手法を導入してきた。
とくに、信賞必罰を打ち出した人事制度においては、「高い成果を上げた従業員を高く処遇する体系にする」一方で、「挑戦を避け、十分な成果を出せない場合には、マネージャーは降格するなど、メリハリの効いた仕組みを導入する」とし、2017年1月16日からは、一般社員への役割等級制度の導入を皮切りに、一人ひとりの成果にしっかり報いる「信賞必罰を基本とした人事制度」の本格運用を開始。「これまでの『標準に集中した評価』から、『メリハリのある評価』へ転換し、社長特別賞与の増枠をはじめとしたインセンティブ制度の拡充などを進める」(シャープ・戴社長)としている。