AMDは8日、同社のグラフィックスドライバ「Radeon Software」の最新版「Crimson ReLive Edition」を公開した。これは2015年11月に発表したRadeon Software Crimson Edition以来のメジャーバージョンアップとなる。これ先立ち、AMD本社よりいつもの方々(Photo01~03)が来日して説明を行ったので、まずはこちらの話を紹介したい。

Photo01:おなじみSasa Marinkoivc氏(Software Marketing, Radeon Technology Group)

Photo02:こちらもお馴染みTerry Makedon氏(Software Strategy, Radeon Technology Group)

Photo03:こちらは新しく加わられたGren Matthews氏(Senior Manager, W-Series Product Management, AMD FirePro Professional Graphics)。肩書きからも分かる様に、Radeon Pro向けソフトウェアの担当だそうだ

2016年のRadeon Softwareへの取り組みをおさらい

最初にMarinkoivc氏から2015年リリースのCrimson Editionについてのまとめがあった(Photo04)。ドライバそのものは相変わらず煩雑にリリースされたが、ユーザーからの評価も悪くなかったとしている(Photo05)。

Photo04:2015年に開催された説明会では、2016年にWHQLドライバを6つリリースすると予定されていたが、実際にはもうちょっと多い8つリリースされた

Photo05:個人的な印象でいえば、以前ほどドライバのバージョンによるバラつきが無くなった感じはする。改善のスピードそのものはともかく、「前のバージョンでは動いていたのが動かなくなった/おかしくなった」ということはCrimson Editionに関しては経験していない

DirectX 12に関しては、すでに15以上のタイトルが対応しており、2017年中には50以上のタイトルが出てくるとしており(Photo06)、こうした動向に向けてAMDが新たに投入するのがRadeon Software Crimson ReLive EditionとRadeon Pro Software Crimson ReLive Editionとなる(Photo07)。

Photo06:DirectX 12タイトルの増加。まぁこれはトレンドとして当然だろう

Photo07:「ReLiveとは何か?」というのは後でまとめる

ReLive Editionの詳細は後でまとめるが、昨今の取り組みとしてOpen Standardとのコラボレーション(Photo08)やRadeon LOOM(Photo09)、OCAT(Photo10)などのツールの提供、あるいはDirectX 12におけるBlut Tool(Photo11)やTressFX 4.0(Photo12)などのグラフィック表現に関する改善、H.265をサポートするMedia Framework(Photo13)などに加え、VR向けのLiquidVR(Photo14,15)などが行われていることをざっと紹介した。

Photo08:ここには出てこないが、Linux向けのドライバの提供なども含まれている

Photo09:パノラマ映像を効率よく作成するためのツール。最大31個までのカメラをサポートする。ただし現在はまだプレビュー段階

Photo10:DirectX 12でもフレームレートの取得もできるOCAT。ただしFRAPSなどに比べると、いろいろ扱いは面倒で、現状ではそのまま代替するのはちょっと難しい。ちなみに他にもPresentMonというツールもあるが、こちらはソースでの配布なので、Visual Studioでビルドできる環境が必要

Photo11:こちらはゲーム開発者向けツール

Photo12:これも同じく

Photo13:これは録画/再生アプリの開発者向け。ちなみにGCNベースのコアは全てこのAdvanced Media Framework 1.4を利用できるとの話だった

Photo14:LiquidVRそのものは以前にも説明があったので、ここでは割愛する

Photo15:当然視覚だけでなく聴覚に対しての配慮も必要で、TrueAudioでこれの対応を実装する形になる

続いてがMatthews氏によるRadeon Pro Software向けの説明である。今回からRadeon向けとRadeon Pro向けが一つのソフトウェアパッケージで提供されるようになった(ただしPro向けのソフトはRadeon ProとかFireProでないと動作しない)。

そのRadeon Pro Softwareであるが、特徴としてはLiquid VRのサポート(Photo16,17)、Linux Driverの提供(Photo18)、サポートの充実(Photo19,20)と互換性の保証(Photo21)に加え、性能の改善(Photo22,23)、VMWare vSphere 6.5への対応(Photo24)やROCm(https://github.com/RadeonOpenCompute)(Photo25)などが提供される事が明らかにされた。

Photo16:ビジネス向けのVRが本格化してきていることへの対応と思われる

Photo17:VR CADやVR Animationへの対応が主なところであるが、一部ビジネス向けにゲームエンジン(例えばUnreal Engineなど)が使われているため、これらのサポートも行うとしている

Photo18:ドライバは2種類あり、完全公開のOpen-Source Coreのものと、AMDの自社開発によるProprietaryのものがある。性能は当然Proprietaryの方が上だそうだ

Photo19:毎四半期ごとにアップデートドライバを出すとしている

Photo20:従来に比べて、より多くのテストを実行しているとする

Photo21:主要なアプリケーションによる認証が済んでいる。実のところPro版か否かの最大の違いはこのアプリケーション毎の認証を取得しているかどうかだ

Photo22:スコアはFirePro W7100を利用して、Version 14.502.1019とVersion 16.50を比較した結果だそうである

Photo23:環境はおおむね同じ。Radeon Pro WX 5100で妙に改善率が高いのは、逆に今までの最適化がそれほど進んでいなかったということだろうか?

Photo24:これまではvSphereの環境ではPCI Passthroughを使って動作させることは可能だったが、今回きちんと対応された形だ

Photo25:これは要するに大量のFireProなりRadeon Proなりを搭載したHPCを構築する場合に必要なソフトウェア側のフレームワークである