【レポート】

AMD、「Radeon Software Crimson Edition」の概要を公開 - 安定性と性能の両立を目指した新ドライバ

 

米国時間の11月2日、AMDのRadeon Technology Groupは従来のCatalystに代えて新しくRadeon Software Crimson Edition(以下、Radeon Crimsonと表記)と呼ばれるソフトウェアを提供する事を発表した。この新しいRadeon Crimsonは11月24日に公開されるが、これに先立ち説明会が開催されたのでその内容をご紹介したい(Photo01,02)。

Photo01:説明の前半を担当したSasa Marinkoivc氏(Software Marketing, RADEON Technology Group)。前回はFreeSync/LiquidVRの説明会の折に来日

Photo01:説明の後半を担当したTerry Makedon氏(Software Strategy, RADEON Technology Group)。氏もFreeSync/LiquidVRの説明会の際に来日されたが、2014年のCatalyst Omegaの説明会の折にも来日している

まずは2014年に発表されたCatalyst Omegaを振り返り(Photo03)、多数のダウンロードがあり、かつ顧客満足度もそれまでより高くなっていることを紹介した。続く2015年では、Catalyst Omegaを含む3つのメジャーリリース(WHQL取得リリース)と9つのBeta、さらに特定ゲームに対応したバージョンをリリースしたが、2016年はWHQL取得ドライバを最大6つリリースする予定で、これまでより少し減らすという(Photo03)。

Photo03:顧客満足度の数値は、そのほかのCatalystの平均値と比較したもの

Photo04:さすがに「バージョンアップが多すぎる」という指摘があったそうだ。実際筆者もベンチマークのたびにドライバをUpdateする必要があった

安定性の向上とパフォーマンスの改善を目指した新ドライバ

さて、「Radeon Software」として最初の製品が"Crimson Edition"となる(Photo05)。Catalyst Omegaと同じように、あくまでもこれは最初のリリースだけの話で、今後のRadeon Softwareのすべて名前が付くわけではないとのこと。

Photo05:これは赤系統の色(Crimsonは深紅)にちなんだそうで、2016年末にリリースするものも、同じく赤い色の名前を付けるかも(Makedon氏曰く「Bloodとかね(笑)」)とのことだった

そのRadeon Crimsonは、安定性を基板に、操作性・機能・性能・効率のすべてを改善したもの(Photo06)だと、具体的にな数字も挙げて改善の度合いを紹介した(Photo07)。

Photo06:「性能と安定性が両立するのか?」というちょっとした突っ込みどころはあるのだが……

Photo07:具体的な数字で改善の度合いを示す。もっともこの機能や性能の改善は、必ずしもすべてのGCNベースのRadeonで享受できるわけでもない。詳しくは後述する

まずは基盤となる信頼性について。Radeon Crimsonでは、従来比でテスト項目を大幅に増やし、より安定性を高める努力がなされている(Photo08)。また、Catalyst Omegaの時と同様にコミュニティからバグレポートを集め、これのTop 10から優先的に解決するという手法をとった(Photo09,10)。

Photo08:自動テストのケースは倍、マニュアルテストのケースは25%、構成の組み合わせ数は15%と、それぞれテスト項目を増やしたとする

Photo09:Catalyst Omegaでのコミュニティフィードバックの話はこちら。このときと同様にコミュニティから要望を募り、品質向上に役立てるという

Photo10:実際にはTop 10だけでなく長大なリストがあり、そのトップの10個だけをここには掲載しているとのこと

ちなみに現在も引き続きバグレポートを待っているとのことだ(Photo11)。

Photo11:AMDは現在もバグレポートを受け付けている。もちろん、いまから問題を登録してもRadeon Crimsonには反映されないが、次以降のWHQLドライバには反映されるかもしれない

次が機能であるが、まずUIは従来のCatalystのCCC(Catalyst Control Center)が.NETベースのものだったのに対し、新しくQtで新規に作り直され(Photo12)、Interfaceも一新された(Photo13)。加えて、画面の初期化する時間が3倍高速になったとしている(Photo14)。さらに古いドライバを完全に消すCLEAN Uninstall Utilityも新たに提供されることになった(Photo15)。

Photo12:.NETを使うと、それだけで立ち上がりにやや時間が掛かるのは事実である。ただ、CCCの遅さは.NETだけではないように思えるが

Photo13:さすがにWindows XPやVsitaは未サポートになる模様

Photo14:余談だが、筆者の様に6画面もあったりすると、この画面の初期化に結構時間がかかっていたので、これは素直に歓迎したい

Photo15:「CLEAN Uninstall Utility」そのものはすでに提供されているもので、AMDのサポートページから単独で入手も可能である

新機能も数多く追加

設定画面以外の部分としては、一般的に利用できるドライバとして初めてバーチャルリアリティ(VR)向けの技術「LiquidVR」(Photo16)や「Asynchronous Shaders」(非同期シェーダ)サポートされた(Photo17)。

Photo16:提供される機能そのものは3月に紹介されたものと同じ

Photo17:非同期シェーダのサポートはWindows 10+DirectX 12の環境で標準サポートされるが、現時点でこれに対応しているH/WはGCNのみであるとMarinkoivc氏は強調していた

FreeSync周りにも機能が追加された(Photo18)。今回サポートされたのは、LFC(Low Frame Compensation)で、実表示フレームレートが、ディスプレイ側が対応できる最小フレームレートよりも低い場合に、動きをスムーズにしたり揺れを削減できるという。

Photo18:これまではディスプレイ側のフレームレートの方が遅い場合の対応しかインプリメントされてこなかった

フレームレートを一定に保つ機能も改善されており、DirectX 9~11、さらにはCrossFire環境でも動作しており、これは特にeSPORTSの様なシーンで効果的であるとのことだ(Photo19)。気になる点としてHDMIによるFreeSyncの対応が挙げられるが、現在販売されているFreeSync対応ディスプレイのHDMIですぐに利用できるとはならないようだ。

Photo19:これはSkyrimをプレイした場合の実測値で、全てのフレーム処理が10ms±1ms未満で一定に保たれており、安定してプレイができる様になっている

また、独自の解像度設定を追加することが可能になった(Photo20)ほか、Windows 10環境下では仮想解像度機能が現実的に利用可能になったとしている(Photo21)。

Photo20:昔のドライバ(DVIになる前のAnalog RGB時代)はドライバあるいは外部のユーティリティでこれが可能だったが、ここしばらくはこの手の調整機構が完全に消えていた

Photo21:仮想解像度の技法そのものも昔から存在するが、Windows 10ではDPI設定機能が強化された結果、これを利用することでより使いやすくなったとのこと

ビデオ関係では、第6世代APU(Carizzo)上でビデオ再生支援機能が使えるようになったことに加え、被写体ブレの軽減や動画のディテールを強調する「Advanced Detail Enhancement」といった新機能も追加されている(Photo22)。

Photo22:右の写真はAdvanced Detail Enhancementのイメージ画像である。右の方が地面の割れ目などが少しくっきりとしている

映像のスケーリングの際に、いわばAnti-aliasに近い処理を行うAdaptive directional filteringが追加された(Photo23)や、動画ごとに最適なコントラストを調整するAdaptive Dynamic Contrastが新たに加えられた(Photo24)。

Photo23:Adaptive directional filteringによるスケーリングの例。画像の右側では斜めの線がスムーズになっているのが分かる。また2K→4KのUpscalingの性能も改善されたとのことだ

Photo24:動画ごとに最適なコントラストを自動調整するとのこと

パフォーマンスや電力消費の改善も

ここからは性能周りの話。まずRadeon Crimsonでは新たにShader Cacheが設けられた。これは一度Shaderにロードした内容をHDDにコピーしておけるというものである。これにより、Shaderのプログラムを入れ替える場合の速度が改善したとしている(Photo25)。資料によると絶対性能はともかく、性能のバラつきがやや低くなり、結果としてよりスムーズにプレイができる様になったとする。

Photo25:左がロード時間の話。右はプレイ中のフレーム時間で、平均性能そのものは61.43fps vs 61.52fpsで大差ないが、平均からのバラつきが10%以上減ったとしている

DirectX 12での性能も20%ほど改善した(Photo26)。もっともこれは改善の度合いがかなり高くなった場合のものであり、全般的に言えば5~10%程度(Photo27)ということのようだ。また、Linux環境における性能(Photo28)や、Radeon Crimsonでは従来よりも早くCPUを描画処理から開放するので、マシンの反応時間も改善するとした(Photo29)。

Photo26:ちなみにFable LegendsのWindows 10向けは現在Closed BETA段階である

Photo27:Photo26と数字が異なるのは、利用しているハードウェアが違う(Photo26はRadeon R9 Fury X、Photo27はRadeon R9 390Xのもの)ためである

Photo28:LinuxなのでこれはOpenGLベースのものである

Photo29:従来だと3フレーム分の処理を行ってからCPUが開放されるが、Radeon Crimsonでは1フレーム分完了時に開放される

次が省電力性の話。まずはFRTC(Frame Rate Target Control)で、これを利用する事で大幅に消費電力を改善できるとする(Photo30)。もっともこのFRTCは全てのGCNで23%改善できる(Photo31)というわけではなく、製品によってはもう少し改善率が低かったりほとんど効果がなかったりするので、ここまで消費電力を削減できるのはRadeon R7 350/370とR9 270シリーズのみとのことだった(Photo32)。

Photo30:ゲームプレイに90fpsは不要で55fpsあれば十分というケースでは、FRTCを55fpsに設定する事で、GPU側の動作周波数を落とし、消費電力を下げられる

Photo31:別に「GCN 1.2でないと効果が無い」というわけでは無い模様(GCN 1.0のOland/Trinidadが含まれているから)

Photo32:Code XLはAMDが無償で提供するOpenCL用のDebug/Profiling Toolである

最後が開発者絡みの話であるが、OpenCL 2.0の追加機能のサポート、それとCodeXL 1.9のリリースが挙げられた。ただ実はこれには続きがあるのだが、取りあえずそれは後に回して、Photo33が全体のまとめである。最後のスライドがこちら(Photo34)。Makedon氏いわく「開発者向けが薄いのは、この後大きな発表が予定されているからで、もう数週間待ってほしい」とのことであった。

Photo33:Catalyst Omegaの時は3枚にもわたる長大なリストだったのに比べれば大分短くなったが、これはCatalyst Omegaでかなり底上げができたから、今回はあまりできることが残ってなかったと判断すべきだろう

Photo34:素直に考えると、先日SC15で発表されたBoltzman Initiativeに関係していると思うのだが、これについては素直に続報を待ちたいと思う

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