有機ELならではの機能を搭載した広色域ディスプレイ

本機の大きな魅力となっているのが、その高精細な有機ELディスプレイだ。サイズは14型ワイドで解像度は2,560×1,440ピクセルとなっている。有機ELは応答速度が非常に速く(本機の場合は1ms以下)、コントラスト比が高い(100万対1)という特徴を持つが、本機のディスプレイはそれに加えてAdobe RGBカバー率100%という広い色域を実現しているのもポイントだ。

今回は「ThinkPad X1 Yoga」の液晶モデルを同時に借りることができたので、さまざまな画像を表示してふたつのモデルを比較してみた(閲覧するPCの環境によっては、画面上では両モデルの違いがわかりづらい場合があるので、その点はご了承いただきたい)。

液晶モデル(左)と有機ELモデル(右)。有機ELの方が全体に鮮やかで原色も綺麗に再現されている

両モデルを比較して、まず気がつくのが有機ELモデルの発色のよさだ。液晶モデルに搭載されているIPSパネルもかなり高品位なものなのだが、有機ELの方は赤や青、緑などの色がより鮮やかに表現されている。

また、黒の締まりがよいのも印象的だった。これは、有機ELが自発光型のデバイスということが関係している。液晶の場合は、パネルの背後からバックライトで照らしているため、その光が漏れて黒が浮きがちになってしまうことが多い。

しかし、有機ELはひとつひとつの画素が発光するため、バックライトが必要なく、画素を発光させないことで完全な黒を表現することが可能だ。暗いシーンが続く動画などを表示するとよく分かるが、液晶だと暗部が浮いてしまって濃いグレーのように見える場面でも、OLEDでは深く沈んだ"漆黒"を表現することが可能だ。

次に、バラの花の写真を表示して比較したところ、液晶モデルは花びらの明部が白っぽく飛びがちだったのに対して、有機ELモデルは薄紅色の微妙なグラデーションがきちんと再現されていた。また、液晶モデルは葉の裏側の陰になっている部分が黒くつぶれてしまっているのに対し、有機ELモデルはうっすらと模様が見えており、階調表現力の高さ、色域の広さを実感できた。

液晶モデル(左)と有機ELモデル(右)。有機ELモデルは花びらの薄紅色の微妙なグラデーションが再現されている。また、暗部もきちんと再現されていた

さらに筆者が普段使用している環境(sRGBカバー率約100%の液晶ディスプレイ)でレタッチした写真を有機ELモデルで表示させてみたところ、作業時は分からなかった修正跡がうっすらと残っているのが確認できた。

写真に写り込んだノイズやゴミの除去、人肌の荒れの修正などのように神経を使うきめ細かい作業はできるだけ高品位な液晶でやる方がいいのだが、本機はそういった目的に最適で、特に"色"にシビアなデザインや写真、映像などに携わる人にとって、その表示品位の高さは大きな助けになってくれそうだ。

ちなみに、有機ELモデルはディスプレイのカラー設定を用途に合わせて変更できるようになっている。選択できるモードは「ネイティブ」「標準」「フォト・プロ」など全部で7種類。

有機ELモデルはディスプレイのカラー設定を用途に合わせて変更できる

今回は「フォト・プロ」(色空間:AdobeRGB、ガンマ:2.2、ホワイト・ポイント:D65)に設定して静止画の表示品質をチェックしているが、「カスタム」を選べば色空間やガンマやホワイト・ポイントを自分の好みのものに変更することも可能だ。

ディスプレイのカラー設定で「カスタム」を選べば、色空間やガンマ、ホワイト・ポイントなどを自分の好みに合わせて変更できる

このほか、本機には「有機EL電源設定」という機能も搭載されている。これは、ディスプレイの一部だけを暗くして、電力消費を抑えられるというもの。例えば、アクティブなウィンドウは通常の明るさのまま、タスクバーやバックグラウンドのみ輝度を落として暗くすることができる。

有機EL電源設定で「タスクバーを暗くする」や「バックグラウンドを暗くする」を設定すると、ディスプレイを部分的に暗くして電力消費を減らすことができる

液晶の場合は画素を背後からバックライトで照らすことで表示を行っているため、このように画面内の特定の箇所だけ明るさを落とすのは困難だが、有機ELはひとつひとつの画素が発光し、その明るさを調節できるためそれが容易に実現できる。まさにOLEDならではの便利な機能だと言える。

アクティブなウィンドウの面積によっても消費電力削減効果は変わってくるが、うまく利用すればバッテリー駆動時間をのばすことができるはずだ。

有機EL電源設定で「バックグラウンドを暗くする」を設定すると……

ディスプレイを部分的に暗くして電力消費を減らすことができる

ちなみに、バッテリー駆動時間はメーカー公称値で約9.8時間となっているが、バッテリーベンチマークソフト「BBench」を使って計測してみたところ、電源プラン「省電力」、画面の明るさ「40%」に設定した場合、ほぼ公称値通りの9時間30分の駆動が可能だった(なお、BBenchは「60秒間隔でのWeb巡回」と「10秒間隔でのキーストローク」をオンにし、満充電状態から電源が落ちるまでの時間を計っている)。