韓国サムスン電子は、2016年度第2四半期(4-6月)決算で増収増益を報告した。売上高は50兆9400億ウォンで前年同期比約5%の増加、利益も8兆1400億ウォンと同18%の増加だった。 好業績の背景には、スマートフォンやタブレットを扱う部門の牽引があり、2016年に入って投入している最上位機種のGalaxy S7シリーズのヒットによるものだ。また、新興国向けの低・中価格帯のスマートフォンもラインアップの整理などによって、収益に貢献しているとみることができる。ではなぜ、Galaxy S7シリーズはヒットしたのか。

Galaxy S7シリーズのうちGalaxy S7 edgeが日本で発売。写真はNTTドコモ版

Galaxyシリーズ絶好調の理由

サムスンは第1四半期にGalaxy S7を投入し、米国ではiPhone 6sシリーズよりもGalaxy S7シリーズの販売シェアが上回るようになった。そして第3四半期に入ってファブレット端末であるGalaxy Note 7を投入し、こちらも生産が追いつかないほどの好評を博している。

その理由として、スマートフォン市場の成熟と購買パターンの変化が挙げられる。スマートフォンの普及が飽和状態にある米国などの市場では、人々は基本的に、古くなったデバイスの買い換えを行う。

その際に、好みのブランドからの乗り換えは少ない。米国においては、アップルからサムスンへの乗り換えが5%、サムスンからアップルへの乗り換えが14%程度とされる。Galaxy S7シリーズ、Galaxy Note 7は、既存のSamsungユーザーが「乗り換えたい」と積極的に買い換えに乗り出したことが、販売好調を維持する原動力と考えられる。

Galaxy Note 7

サムスンは、既存ユーザーに対して十分な魅力を、最新スマートフォンに盛りこむことができ、その結果好調な業績を叩きだした。スペックを重視し、理想のスマートフォンの性能を実現できたことが、成功の要因だった。

Galaxy S7、Galaxy S7 edgeは、それぞれ5.1インチ、5.5インチのAMOLEDディスプレイを備え、後者は左右の縁も操作可能なディスプレイとなっている。カメラは1200万画素へと画素数を減らしたが、その分1画素の大きさを拡大させ、色再現やボケ、暗所での撮影を強化した。その上で、高速起動、高速オートフォーカスを実現した。

またプロセッサとメモリは、最高スペックを誇示する。4コアを備えるQualcomm Snapdragon 820を搭載し、32GBの内蔵メモリとmicroSDによる256GBまでの拡張をサポートする。また30分プールの中での利用に耐える防水機能を復活させ、Galaxy S7 edgeで3600mAh、Galaxy S7で3000mAhの大容量バッテリーを内蔵した。

既存のGalaxyシリーズのユーザーが魅力を感じる「スペック」を実現したことが勝因であり、昨年の低迷の原因は、デザインは素晴らしかったがスペックの魅力を訴えきれなかったGalaxy S6シリーズにあった、と見ることができる。