中古販売の流通で端末メーカーにも踏み込む

一方で、今回の報告書を見ると、総務省のガイドラインなどでは指摘されていない所に踏み込んでいる部分も見られる。その中の1つとして挙げられるのが「端末市場における課題」の項目にある、「中古販売の流通促進」という部分である。

報告書の該当部分を見ると、「中古スマートフォン端末の流通数は、平成26年度で227万台にとどまっており、新品スマートフォン端末の出荷台数に対する中古スマートフォン端末の販売実績は僅か8%程度となっている」と、中古端末の流通量が少なく販売が伸びていないことを指摘。その上で、

  • 端末メーカーやキャリアが不当に高い値段で中古端末を購入すること

  • 端末メーカーがキャリアに対し、下取りした端末を国内で再流通させることを禁止するなど、流通を制限すること

  • キャリアや端末メーカーが、下取りした端末を第三者に販売する際、第三者に対し国内市場での販売を制限すること

などが、独占禁止法上問題になるとしている。つまりキャリアだけでなく端末メーカーに対しても、公正取引委員会は問題視する部分があると見ているわけだ。

こうした指摘の背景にあるのは、下取りされる中古スマートフォンの数に対し、国内で流通する中古スマートフォンの数が少ないことにあるようだ。報告書を見ると「下取りによりMNO(キャリア)が取得した中古端末は、その一部が修理等の際の代替機として利用されるほか、大部分は日本国外で販売されるなど、国内の中古端末市場に流通することはほとんどないとの指摘がある」との記述がなされており、キャリアが下取りしたスマートフォンの多くが、海外に販売されていると公正取引委員会側は見ているようだ。

中古端末の国内流通量を抑えることは、中古端末の価格下落を防ぎ、新品の販売価格を維持することにもつながってくる。それだけに、こうしたキャリアの行動の裏には端末メーカーの指示があるのではないかと、公正取引委員会側は推測しているようだ。そこで浮かんでくるのがアップルの存在である。