Anniversary Updateの変更点 アプリ編

最後にバージョン1607のUWPアプリケーションについて紹介しよう。もっとも、Windows 10の標準アプリケーションは、単独のリズムで更新されているため、ここでは他の節に含まれなかったアプリケーション系機能について述べることとする。まず、バージョン1607において最大の変化は「接続」が加わった点だ。OSベースでMiracastの受信機能をサポートし、Windows 10およびMiracast対応Wi-Fiデバイスを供えるPCでアプリケーションを起動すると、Miracast受信を可能にするというものである。

「設定」の<システム/このPCへのプロジェクション>でMiracast接続設定を行う

Surface Pro 4側で[Win]+[K]キーを押してワイヤレス接続を実行。図の例では中央にデスクトップPC名が表示されている

デスクトップPCで「接続」を起動し、左下にあるSurface Pro 4から拡張モードで接続した状態

気になるのは「このデバイスでは、ハードウェアがワイヤレスプロジェクション用として設計されていないため、コンテンツの表示に問題が生じる場合があります」というメッセージだ。このせいなのか、意図しないタイミングで接続が切れる現象が散見される。今回USB型Wi-Fiを接続したデスクトップPC、Surface Pro 4、Surface Proを用意して検証してみたが、結果は皆同じだった。

MiracastはWi-Fi Direct経由でのみ動作し、NDISやWDDM(Windows Display Driver Model)のバージョンが重要になる。前者はバージョン6.30以降、後者はバージョン1.3以降が必要となるが、バージョン要件を満たしてもMiracastのサポートは任意のため、必ずしも対応しているとは限らない。そこで、下図に示したような手順が必要になる。

管理者権限でPowerShellを起動し、「Get-NetAdapter | Select Name, NdisVersion」と入力して[Enter]キーを押せば、NDISのバージョンを確認できる

「dxdiag.exe」を起動するとWDDMのバージョンを確認できる。また、次の手順を実行するため、<情報をすべて保存>ボタンをクリックして、「DxDiag.txt」を生成する

「DxDiag.txt」を開いて「Miscast」を検索する。これでGPUドライバーがMiscastをサポートしているか確認できた

各PCでMiscastのサポート状態を確認すると、「Available, with HDCP」「Supported」「Not Supported by Graphics driver」といったメッセージを確認できた。順番に、"Miscast対応。デジタル信号を送受信する経路を暗号化するHDCPもサポート済み"、"サポート"、"GPUドライバーがサポートしていない"というものだが、Available, with HDCPと提示されたデバイスでも冒頭の「~コンテンツの表示に問題が~」のメッセージが現れる。この辺りはWindows 10の普及と共にデバイスおよびドライバーの更新で改善されるのではないだろうか。

もう1つ述べておきたいのは、バージョン1607でサポートされるはずだった「Messaging everywhere」の見送りである。本機能はWindows 10搭載PC、およびWindows 10 Mobileデバイス上の「メッセージング」で受信したメッセージを同期するというものであだ。Microsoftは「Skypeを使った方が優れた体験を提供できる」と説明し、ビルド14376リリース時に本機能をAnniversary Updateから取り除くと発表した。

Windows 10 Mobileで受信したSMSをPC版「メッセージング」で受信した状態

2013年4月にMicrosoftは自社製IM(インスタントメッセンジャー)だったMSN|Windows Live|WindowsメッセンジャーをSkypeに統合する方針を打ちだしたが、UWP版Skypeの開発スピードは決して速くはない。だが、本稿を執筆している最中の7月18日(現地時間、日本は7月19日)にWindows 10 Insider Preview PC版限定のバージョン11.6.187.0をリリースし、ボット機能などをサポートしている。

設定を確認する限り、Messaging everywhereに関する項目は見当たらなかったが、Microsoftは今夏リリース予定のWindows 10 Mobile版ではSMSリレー機能をサポートすると述べていることから、Windows 10 Anniversary Updateリリース後には、Messaging everywhereと同等の環境を得られるようだ。なお、Skypeは従来のP2P(Peer to Peer)パケットを廃止し、Azureベースで運用が行われる。そのため、P2P上で実現していた一部機能はSkypeから取り除く予定だが、Skypeプレビューを見る限り、基本的なテキストチャットや音声チャットは使用できることを確認できた。

UWP版「Skypeプレビュー」は執筆時点でプレビュー版だが、Windows 10およびWindows 10 Mobileをサポートしている

アプリケーションに関しては、新たにリセット機能やアドオン機能がサポートされる。Windows 10ファーストバージョン以降、UWPアプリケーションは安定せず、PowerShellを用いたリセット方法がネット上で話題になっていたが、それを「設定」上から操作するGUIパーツが加わった形だ。また、アドオン機能に関しては対応しているUWPアプリケーションが確認できなかったので詳細を説明できないが、「ストア」から追加ダウンロードしたコンテンツのアンインストールなどが可能になると思われる。

「設定」の<システム/アプリと機能>でUWPアプリケーションをクリックして選択し、<詳細オプション>をクリックする

執筆時点では<リセット>ボタンしか確認していないが、今後UWPアプリケーションによってはアドオンのインストールや管理が可能になるようだ

阿久津良和(Cactus)