島根県立隠岐島前高校。目の前が海という美しいロケーション(隠岐島前高校パンフレットより)

では、Nセンターの取り組みが本当に地方創生につながるのか……。ヒントは「高校魅力化」に取り組んでいる“先達”の高校にある。

たとえば島根県立隠岐島前(どうぜん)高校。隠岐の島という地理的に不利ともいえる立地にあって、高校魅力化に2008年から取り組み、生徒数を増やしている。「島留学」をうたい、島外からの生徒を募ったほか、「特別進学コース」「地域創造コース」を用意。特に後者は体験型・課題解消型の学習や島ならではのカリキュラム、企業などへのインターンシップに重点を置いている。石破大臣も基調講演の中で島前高校の取り組みについて絶賛していた。

おりしも2020年度に大学入試改革が行われ、“知識の豊富さ”から“知識の応用力”を問われる試験に変更される。体験学習やグループワークは、そうした知識の応用力を養うのに欠かせない学習法だ。Nセンターでそうした学習が行えるようになり評判が高まれば、生徒が自ずと集まり、地方創生の礎となれるだろう。

さて、N高といえば「ドラクエ内で遠足!?」「ヘッドマウントディスプレーをかけて入学式!?」「ウイイレで体育授業!?」など、嘲笑ともとれる書き込みがネットで散見される。だが、フタを開けてみれば、2016年4月に開校したN高に、1,482人もの生徒が入学した。ネット上の高校でこの人数が多いのか少ないのか筆者には判断できないが、一般的な高校と比べれば、堂々の“マンモス校”だ。ドワンゴも「初年度の入学者数としては多かったと思います。また、4月以降も転入・編入生徒が増えています」(広報担当者)とした。

ニコファーレで行われた入学式に参加した生徒(ドワンゴプレスリリースより)

カドカワ 代表取締役社長 川上量生氏は、「ネットに集まる人材には優秀な人が多い」「N校から一時も早く東大合格者を輩出したい」と、しばしば熱く語る。Nセンターの取り組みも、そうしたセリフと同様に、教育に対する同社の熱量が伝わってくるような内容だった。

石破大臣の講演に戻ろう。当時、鳥取大学附属の小中一貫校に進んだそうだが、大学付属の一貫校に入れるのは“学力の高い生徒”という風潮があり、大臣もそう思い込んでいたそうだ。だが、当時の担当教師いわく「勘違いしてはならない。始まったばかりの大学付属小中一貫校は、“実験の場”。いわば諸君は“実験材料”」と、辛辣な言葉を投げかけたという。「今でこそ“生徒は実験材料”などという発言をしたら大問題」と大臣は指摘したが、ひょっとしたらN高の斬新な取り組みと重なって、このエピソードを披露したのかもしれない。