稲作所得が上がりにくいという課題
日本の47都道府県でもっとも面積が広いのは北海道。逆にもっとも面積が狭いのが香川県だ。当然、面積が狭いので耕地も狭い。そのため、米についても大規模栽培が難しいという現状がある。香川県では、5ha以上の農地を所有する層も増えつつあるが、依然として1ha未満の層が8割を占める(香川県農政水産部「統計で見る香川の農業・水産業 平成27年度版」を参照)。一般的に、規模が小さいと生産効率は上がりにくく、稲作所得も低いまま。その解決策のひとつとして有効だと考えられているのが米のブランド化なのだ。
栽培者の一人、「おいでまい」マイスターの川染常男氏は、「おいでまいは、とにかく透明感があってきれいなお米。高い評価を得ているし、農業経営基盤において楽しみな品種」と語る。川染氏はおいでまいと、さぬきうどん用に開発された小麦「さぬきの夢」を二毛作で栽培。そのような米麦農家にとって、おいでまいは重要な品種だ。適期作業を厳守する以外、特に栽培管理で難しいと感じることはないという。
今後も香川県では積極的に新品種の開発を推進。おいでまいは中生(なかて)の品種で、今後は消費者からのニーズに応えるべく、早生(わせ)かつ香川の気候に適した品種開発に積極的に取り組んでいる。
加工用途も視野に入れた今後の広がり
とにかく今はおいでまいの認知度を拡大するのが急務と、香川県「おいでまい」委員会は考える。耕地面積が狭いため、県外の人にとってはどうしても「希少米」という扱いになってしまうが、用途を拡大することでさらに多くの人に知ってもらえるとにらむ。
たとえば米粉にして団子やロールケーキ、バウムクーヘン、パンといった和洋菓子を作るほか、酒米として利用し日本酒を醸造するなど、加工品への展開を進めている。特においでまいの米粉は吸水性が低く、適度な粘りを持つことから食味も好評価。米粉パン専用の品種が開発されるなど日本で米粉への注目が高まるなか、米粉加工品についてはさらなる需要拡大がねらえそうだ。
「おいでまい」委員会の担当者によれば「おいでまい加工品が登場することで、ますます地元での知名度も上がっています」と好調なようだ。東京都港区にあるアンテナショップ「香川・愛媛 せとうち旬彩館」で3月に開催されたおいでまいフェアでは、試食したうえで購入していく来場者が多く、2kgパック、5kgパック、無洗米、ご飯パックを用意したが、いずれも完売。なかでも、重くて敬遠されそうな5kgパックが意外と人気だったそう。味は東京の消費者にも受け入れられると自信を持てたものの、やはり「香川で米作りをしている」と知らない人が多かったのは今後の課題。ブランド化のために"認知度"は欠かせない条件だ。