文明堂のおやつカステラ。カステラに対する日々の需要の呼び起こしに成功した

その典型例が、文明堂が発売する「おやつカステラ」だろう。文明堂といえば1900年(明治33年)に創業されたカステラ製造・販売の老舗。1951年に日本橋に本店をかまえ、以来“街の顔”としての役割も果たしている。だが、カステラは“贈答用お菓子”という位置づけだったため、パッケージが大きくなりしかも高級路線に走らざるをえない。日々の需要に応える製品ではなかったため、一時期低迷した。その高級菓子を“おやつ感覚”で楽しめないかと企画されたのがおやつカステラで、この製品のマーケティングを手がけたのがClipニホンバシのベンチャーだったという。老舗企業の施策をベンチャーが手がける……これこそまさに日本橋ならではのコラボレーションといえる。

さまざまな企業が集まっていることに加え、立地の“良さ”も日本橋の強みだといえよう。日本橋の北側にはポップカルチャー、サブカルの集積地・秋葉原が、南側には多数のグローバル企業が本社をかまえる大手町がある。アイデア次第で“アキバ文化”を絡めたり、グローバル企業を巻き込んだりもできる。

プライベート・コンサルタントと打ち合わせをする北島千春さん(左)。“日本橋にもっと着物を!”をテーマにイベントなどを企画している。光村氏いわく「Clipニホンバシの象徴的人物」なのだそう

専属スタッフが多角的にサポート

Clipニホンバシは、単にベンチャーにフリーアドレス制のワーキングスペースを提供しているのではない。さまざまな施策をとおし、ベンチャーが手がける事業をサポートしている。その代表的な存在が「プライベート・コンサルタント」で、これは31VENTURESのスタッフが、あたかもベンチャー企業の専属コンサルのように課題解決や人脈・企業紹介などを行うというもの。事業のアイデアはあるのにどう動いてよいかわからないといった際に助言したり、悩みを聞いたりとサポートしてくれる。

また光村氏はこうも続けた。「16年4月1日よりClip ニホンバシをはじめ、霞が関や柏市などにある複数の31VENTURESオフィスの利用者を束ねた『31VENTURESクラブ』を設立しました。クラブ設立により、これまでClipニホンバシのプライベート・コンサルタントは、31VENTURESクラブ会員であればご利用できるようになりました。さらに31VENTURESではこのコンサルに加え『コミュニティマネージャー』も導入しています」。コミュニティマネージャーは、会員と会員をつなげて共同体を創り上げるのが役割。そのベンチャーに対し、どのような“つながり”が必要なのか模索し、提案する。Clipニホンバシの利用者は、プライベート・コンサルタントとコミュニティマネージャーによって多角的にサポートされるのだ。