アクロニスは、全世界500万人以上の個人ユーザーと、30万社を超える企業ユーザーが利用している、データバックアップソリューション、障害復旧ソリューションなどを提供している企業だ。

アクロニスのセルゲイ・ベロウゾフCEOは、「データを保護するだけでなく、いかにコントロールするかが大切になってきている。その変化にあわせて、大手企業だけでなく、中小企業や個人が、データの重要性を再認識する必要がある」と指摘する。

ベロウゾフCEOに、データを取り巻く環境変化と、それに向けた同社の取り組みについて聞いた。

アクロニスのセルゲイ・ベロウゾフCEO

――昨今のデータバックアップ市場をどう捉えていますか。

ベロウゾフ氏:データバックアップ市場は、目まぐるしく変化しています。昨今では、データバックアップそのものを捉えるのではなく、データ保護やシステム保護といった幅広い観点で捉えたり、あるいは、データを検索したり、共有したりといった点において、データをどうコントロールすべきか、という点にも注目が集まってきています。

ただ、すべてにおいて共通しているのは、「誰もがデータを失いたくはない」ということです。

第三者によってデータが破壊されたり、間違った人の手に渡ってしまいデータがなくなってしまったという場合はもちろんですが、データが見つけにくい、探し出せないということで事実上データを失うこともありますし、データをある場所から別の場所に移動させたいのだが、それができずに結果としてデータを失うということもあります。

つまり、いま重要視されているのは、データをどうコントロールするのか、ということだといえます。

また、安全にデータを格納するには、複数のコピーを用意する必要があり、それらのデータをまったく違う場所に格納しておくことが最適であるにも関わらず、それがまだ浸透していない、あるいはできていないという点も改善していく必要があります。

もうひとつ見逃せない動きが、データそのものの重要性が増しているという点です。

従来は、大企業のみがデータを保護していればいいという状況でしたが、いまでは中小企業においても、個人においても、データを保護し、データをコントロールしなくてはなりません。

前世代では写真やビデオの数も少なく、昔を振り返るには、自分の記憶に頼るしかありません。しかし、いまの時代は、多くの記録が残っていて、データから自分の人生を振り返ることができるという、これまでにないユニークな時代を迎えています。しかし、それを実際にできている企業や個人は少ないといえます。もっとデータに対する意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。

一方で、いまの時代は、これだけ数多くのデータが活用されているにも関わらず、データに関する法律が原始的であり、文化といえるものが育っていないという問題点も指摘できます。

人間は、自分の身体について考えれば、ダイエットをしなくてはならないことに気がつきます。しかし、データについては、そうした考えに至るところまで認識したり、熟考するような人はひと握りしかいません。

データに関する法律についても単純なものに留まっており、データの権利保護まで深く踏み込んだものにはなっていません。今後のデータを取り巻く法律や権利というものは、「もはやデータは、人を形成する一部である」というような認識を持った上で作られたものでなくてはいけません。

――こうした市場環境のなかで、アクロニスは、どんなメッセージを出していますか。

ベロウゾフ氏:我々のメッセージはとてもシンプルです。それは、こうしたデータバックアップ市場の変化に対して、常にベストなソリューションを提供しているという点です。

データを格納し、管理し、保護を簡単にできる。迅速に、信頼性のある形でデータを復旧できる。そして、データを保護する際にも、利用者が自由に選択できる環境を用意しています。他社のソリューションの場合は、ローカル環境におけるデータ保護であったり、クラウド環境への保護であったりといったように特定の方法でしか、バックアップができないという提案です。しかし、アクロニスの提案は、自分の好きな方法で、好きな場所にデータを保護し、しかも、それがいつでも変えられるという環境を実現しているわけです。

データをバックアップしなくてはならない理由はいくつもあります。たとえば、ランサムウェアへの対策という点がそのひとつです。この部分にも、アクロニスは強いソリューションを持っています。

そして、アクロニスの最大の特徴は、データをコントロールする機能や能力を提供している点にあります。信頼性の高いサービスを提供していますから、高いクオリティに対する期待値が高い日本のユーザーに応えることができるソリューションだと自負しています。

――アクロニスの技術的な強みはどんなところにありますか。

ベロウゾフ氏:アクロニスには、データに関する技術に優れた、310人の超人的な人材がいます(笑)。そのうち、博士号を持っている技術者が20人と、システムソフトウェアに精通した技術者が多い点も特徴です。

コンピューティングに関しては、マイクロソフト、オラクル、IBMといった大規模企業が市場をリードしていますし、ネットワークもシスコシステムズ、ジュニパー、ファーウェイという大きな企業が市場を牽引していますが、ストレージについては、マーケットリーダーがいない状況だと私は考えています。

そのような状況を捉えれば、いまの段階からエンジニアを増強して、ストレージ分野におけるマーケットリーダーを目指すのが得策です。また、当社では、すでに100以上の特許を取得しており、これも他社との差別化につながる要素だと考えています。

――日本ユーザーにおけるデータの保護、データのコントロールに対する意識はどう捉えていますか。

ベロウゾフ氏:日本に限ったことではないですが、日本でもデータバックアップをしていない人が多いのは事実です。とはいえ、世界各国のユーザーと比べてみると、日本のユーザーは、データ保護の意識が高い方だといっていいでしょう。

しかし、日本は地震などの自然災害が多い国でもあり、日本人はデータを失ってしまいやすい環境にいるともいえます。日本人は、もっとデータ保護に関して関心を持つべきだと考えています。