生命保険に参入する目的とは

これまでドコモが扱ってきた損保商品がドコモ的な商品だとすれば、これからドコモが「+d」で狙うのは、損害保険ではなく、生命保険の領域だ。日本生命と提携し、同社の指導のもと、ドコモショップの店頭で生命保険商品を販売していくのだという。

最近は「協創」の旗頭のもと、さまざまな企業と協業する中で他社製品の販売も積極的に行っているとはいえ、ユーザーから見れば、ドコモという看板の下ではあるが、携帯電話ともITともまったく関係のない商品を購入することになるわけで、かなり異質な体験になるだろう。

問題は、事業としての勝算だ。ドコモは全国に約2400店以上のドコモショップを展開しており、これらが保険の窓口になるとすれば、既存の保険業界にとっては脅威でもある(実際には保険取り扱い店舗は一部の店舗からスタートする予定)。

一方で、いくら日本生命の指導があるとはいえ、携帯電話の販売スタッフはこれまでとはまったく異なる商品を販売することになる。リアル店舗での販売は、一見するとかなりリスクも高いように思われるが、なぜこうした販売体系を選んだのだろうか。

「最近はウェブでも保険商品が販売されていますが、お客さん自身のニーズが顕在化していないとウェブ商品は売れないんです。損害保険は目の前に物があって、これがなくなったり壊れたりすると困る、というニーズがわかりやすいんですが、生命保険は明日病気になる、怪我をする、という確証も実感もないので、リスクを想像しにくい。なので、対面販売でお客さんのニーズを掘り起こしていく必要があると考えました」。

生命保険はドコモショップでの対面対面によりニーズを掘り起こす

売るものは変わるとはいえ、顧客のニーズを酌み、最適な商品を提案するという基本は変わらないということになるだろう。「保険は人生の中でも高い買い物に入ると思います。保険商品は複数用意しますので、お客様も自分で商品を選んで、納得のいくものを買いたいのではないでしょうか」。

ドコモショップは料金の支払いや機種変更、修理など、さまざまな理由で訪れる顧客も多く、こうした中からも保険への潜在的なニーズを拾い上げていくことができるため、勝算はあるという判断なのだろう。