法律の厚い壁も残る

ドコモが生保を販売するということで、損保と同様に、携帯料金と合わせて支払ったり、dポイントの付与といった、ドコモのアセットを生かした販売形態が取られるのではないかと予想していたのだが、実際にはこうした方法は行われないという。

「保険業法上、ポイントの付与や値引きといった、販売価格を実質的に下げるようなことは認められていないのです」。保険業界も医療分野と同じく、これまでのドコモが扱ってきた商品とは異なる法律の下で動いており、思うように動けないこともあるようだ。さらに補足して「新しい商品の開発などは、基本的に保険会社の領分で、金融庁の認可が必要になるんです」という。

せっかく決済機構やユーザー情報を抱えているドコモにとっては大きな足かせとなる制約ではあるが、そんな中でもドコモならではの強みを生かす方法については研究を怠っていない。「たとえばヘルスケア分野の製品と組み合わせることで、お客様の健康増進を後押しするような仕組みができないかは検討しています」。

ムーブバンドのようなヘルスケア商品との組み合わせも将来的にはありえるかもしれない。画像はムーブバンド3(画像提供:NTTドコモ)

なお、ドコモの保険販売については、生命保険については携帯電話のキャリアにかかわらず誰でも購入できるキャリアフリーのサービスとして展開するという。もし前述したような、ヘルスケア製品などとの連携や資産管理系のサービスと連動することになれば、利用者はdアカウントを取得することになるだろうが、こちらもすでにキャリアフリーで展開しているため、従来のドコモの保険販売とは大きく異なっている部分と言えそうだ。

ドコモショップの活用がこれからの鍵?

生命保険分野への参入から感じられたのは、利益を見込めることはもちろんだが、携帯電話の販売の伸びが限界に近づいており、現在のドコモショップをどう生かしていくか、顧客とどのように接していくか、という課題への取り組みの一端ではないか、ということだ。携帯電話会社のサービスというと、何かとすべてウェブでやりとりして解決させてしまう感があるが、あえて人と人との応対に活路を見出しているように見える。

生保販売はすべてのドコモショップで行われるわけではないとのことだが、数年後、ドコモショップは現在のようにスマートフォン端末がズラリと並ぶような状況とは全く異なり、保険商品をはじめとする様々な「携帯と関係ない」商品を扱うようになっているのかもしれない。その先鞭をつけるのが保険販売であるなら、どのような販売戦略をとっていくのか、大いに注目したい。

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