NTTドコモの新事業戦略「+d」では、通信以外の分野で、外部企業との協業を進めている。これまでに農業・医療分野での活動を紹介してきたが、今回は第3の成長分野として、保険分野の活動を見ていく。すでに競争の厳しい分野である保険になぜ参入し、どのような勝算を描いているのか。同社のスマートライフビジネス本部金融ビジネス推進部ドコモ保険担当部長の黒川善文氏に聞いた。

従来は損保が中心

NTTドコモスマートライフビジネス本部金融ビジネス推進部ドコモ保険担当部長の黒川善文氏

そもそも、なぜドコモが保険を扱うことになったのか。実はドコモと保険の関係は長く、2010年からスタートしている。「それまでは携帯の補償はあっても、携帯を持っている人の安心・安全については特になにもありませんでした。携帯電話で手軽に入れる保険があればいいと考え、「携帯する保険」というコンセプトで「ワンタイム保険」を2010年にスタートしました」(黒川氏、以下発言は同氏)。このワンタイム保険は東京海上日動火災保険と協力し、保険代理店という立場で販売される商品で、現在「旅行保険」「1日自動車保険」「ゴルファー保険」「スポーツ・レジャー保険」といった商品が販売されている。

加入の際の手続きでクレジットカードの登録が必要なく、支払いは携帯料金に含まれ、ネットワーク暗証番号と生年月日だけで利用できる手軽さが人気を集めているという。「やはり普段保険に入っていない人でもすぐに加入できるのが人気で、1日自動車保険が一番人気です」とのこと。自動車の任意保険で普段保険対象になっていない若者が、親の車を借りるときに急遽加入したい、というような場合に利用するようで、リピーターも多いという。このほかではゴルファー保険や、サイクル保険も人気があるそうだ。

ドコモが提供する「ワンタイム保険」。「1日自動車保険」「国内旅行保険」など様々な商品が販売されている(画像提供:NTTドコモ)

これらの保険は、元の保険自体は保険会社が提供しているとはいえ、ユーザーから見るとすべてがドコモの生態系の中だけで完了している。携帯電話から購入でき、決済も携帯電話料金と一緒に行えるという点で、非常に「携帯電話的=ドコモ的」な商品だ。