ロック、ポップス向きの「II」

音傾向は「III」と似ているが、「II」のほうが高域の伸びが良く、低域の量感が多い。そのため音に躍動感があり、「III」よりもロックやポップスのノリをうまく表現してくれる。

SONOROUS II

ローリング・ストーンズ「Rocks Off」(FLAC 192kHz/24bit)を聴いてみると、「III」では少し遠くできれいに鳴っていたサウンドが、実在感を増してエネルギッシュに迫ってくる。キース・リチャーズのギターリフが前面に出てくることで、曲の持つ絶妙なドライブ感をより感じられる上、バンド全体のスリリングな演奏もよりリアルに伝わってくる。

ソウルフルな女性シンガーの曲なども合う。ジャニス・ジョプリン「May Be」(FLAC 44.1kHz/16bit)を聴くと、低~中域の出や高域の伸びがよいため、切迫感のある歌声がリアルに再現される。バックの音も良い具合に暴れてくれるので、曲に迫力と疾走感が加わり、ジャニスのボーカルをより盛り上げる。

クラシックでも、感情がほとばしるような(エキセントリックとも言える)演奏を楽しみたいなら、「II」の出番かもしれない。エレーヌ・グリモー「モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 KV 310」(FLAC 96kHz/24bit)は、「III」で聴くと美しいながらも窮屈にまとまってしまうが、「II」はグリモーのキラキラとした色彩豊かな音を上手く表現する。

このほかに交響曲、管弦楽、ジャズ、J-POPなどを聴いてみたが、「高域の倍音再生に優れ、情報量の豊かなサウンドを実現」という言葉はまさに偽りなしだと感じた。なお、音場は「III」と同様にやや狭め。解像度は「III」と比べると低く感じるが、価格とつり合ったレベルだといえるだろう。

ケーブルは着脱式。3.5mmステレオミニプラグケーブル(ヘッドホン側のコネクタは3.5mmモノラルプラグ×2)が付属する。ケーブル長は1.5m

経年劣化を避けるため、イヤーパッドには合成皮革を使用している。側圧はほどよく、肌触りも◎

まとめ

「III」と「II」を試聴して感じたのは、両機ともハイエンドオーディオのマナーにそって開発された機種であるということだ。いわく、全域をいかに破たんなく再現できるかということだが、その点をまっすぐに追求しているのが「III」。ハイエンド機種と比べると解像度や音の再現性で劣る点もあるが、どんなジャンルも美しく心地よい音を聴かせてくれる。まさに「聴き疲れない音」で、音楽をマイルドな美音で長時間楽しみたい人には最適な一台と言ってよいと思う。

「II」は上述のとおり、躍動感が曲のノリを左右するロックなどによく合う。しかし、基本は「III」と同様に音作りが上質で、聴き疲れのないよう仕上げられている。このあたりのバランスはまさに絶妙の一言。ロックやポップスをノリよく再生しながらも、聴き疲れしないヘッドホンを求める人に向いているだろう。外観やスペックを共通としながら、それぞれの個性が光る「III」と「II」。ぜひ多くの人に聴き比べてもらいたい。